学歴フィルター攻略法【三流大学から大手企業に入社する方法】

出身大学を理由に、就活市場から排除される現象は、学歴フィルターと呼ばれています。

 私自身がフィルターにひっ掛かる学歴ですが、大手コンサルに中途入社した経験もあることから、その世界の攻略法には詳しいです。

 そこで就活等における学歴フィルターの実態と、そのメカニズムや攻略法について述べたいと思います。

1.実際に学歴フィルターがあるところは、ごく一部

学歴フィルターに、憤慨している人も多いと思いますが、実は、学歴フィルターが存在しているのは、採用企業の全体のごく一部です。

 学歴フィルターは、誰もが入社したがる大手上場企業や有名企業などの人気企業だけに存在します。

 一方、日本企業の99.7%は、中小企業です。

 中小企業と聞くと、ほとんどの人は、零細企業を想像しますが、例えば製造業では従業員300人以下、または資本金3億円以下の企業であり、かなりの規模がある企業もあります。

その中には、当然ですが隠れた優良企業が存在します。

 しかし、そうした企業の多くは、求職者から見向きもされず人材獲得に苦労しています。

 つまり、人気企業に就職希望者が殺到している一方で、99%以上の会社は、就職先として無視されている実態があります。

2.学歴フィルターの実際

 新卒の就職活動流れは、大きくは、インターン、会社説明会、応募、一次(ペーパー試験等)、二次(面接)、最終面談等の過程を得て、採用に至ります。

 この流れの中で、学歴フィルターは、主に応募前と二次試験(面接)において存在しています。

 第一の学歴フィルターは、インターン、会社説明会に見えない参加障壁を作り、応募自体を諦めさせるために行われます。

 二次(面接)となると、人事部や採用部署の管理職クラス等の面接になります。

 面接は、客観的評価を装っても結局は主観ですので学歴フィルターが存在します。

 最終面談は、主に役員による最終確認になりますが、この段階まで進むと、人事部および採用部署が採用を希望していることになりますので、よほど心証を損ねることがない限り、この段階で落ちることは、あまりありません。

3.なぜ学歴フィルターが存在するのか

①採用側が楽したいから

人気企業においては、例えば、採用予定100人に対して数千人が応募してきます。

 採用側は、数千人の応募者から100人を選ぶのは大変です。

 そこで、学歴フィルターを設定して、説明会等に参加させない障壁を作り、応募者を減らしたいのです。

②後で採用責任を追及されるのが嫌だから

二次面接等での学歴フィルターが存在する理由は、単純に、「後で採用責任を追及されるのが嫌だから」という点が大きいです。

 例えば、学歴フィルターに引っ掛かるレベルの学生が、最終の役員面接に進んだとします。そして、役員面接で不評だった場合、採用担当者が役員から「なんでこんな奴を二次通過させたのだ」と責められます。

 また、入社後、使えないことが判明した場合も、採用担当者が責められるでしょう。

 逆に、東大出身者が、採用後に使えないことが判明しても「だって東大出身ですよ」と言えば「じゃあしょうがないな」と言い訳になります。

③社内が学歴主義者ばかりだから

企業は学歴フィルターがあるため、必然的に組織はすべて学歴フィルターを通過してきた人達で構成されることになります。

 そうした選民的なエリート意識を持った同質的な組織で長年過ごしているので、人気の大企業の所属する人は、外面はともかく内心は、大体が学歴主義者です。

 実際に、某大企業の自称「人事のプロ」は、初対面の社員への第一声は必ず「どこの大学出身か?」と聞いた後に「俺は東大出身だ」というのがお約束でした。

 60代のキャリア官僚OBも、同僚を語る時に、出身大学と入省試験順位などから始まります。

 その他、学歴自慢している大企業OBの60代にも無数に遭遇しております。

 ※参考コラム:本当にいた超学歴主義者(弊社姉妹ブログへ移動します)

 組織上層部が、こういう思考なので採用者選定においても、実態として、かなりの学歴フィルターの存在が想像できます。

4.日本企業の特徴

学歴フィルターを攻略するには、まず、日本企業が、どのような組織で、どのような目的で動いているのかを抑えておく必要があります。

 安定した日本の大企業は、どの会社も、実力主義、成果重視と言っていますが、実際は年功序列、終身雇用のメンバーシップ型組織です。

 要は、先輩ほど偉く、先輩が後輩を評価し、代々、先輩が認めた後輩に権力を譲り渡してきた組織です。

 また、やってもやらなくても評価は大して変わらず、滅多にクビになることもありません。基本的に内向きな排他的な組織で、ドロドロした人間関係があります。

 日本人の会社へ貢献意欲を持っている人は、ほんの数%、逆に会社に反感を持っている人は3人に一人と先進国最悪レベルと言われています。

 さらに、社会人の平均勉強時間は1日数分であり、成長意欲のある人は少数派です。

 ※大企業でも「私には何の専門性もありません」という40,50代がゴロゴロいます。

  参考コラム:48歳定年制の話(日本のリストラ考)

 だから、多くの人は、表面的には、愛社精神や忙しいことをアピールしながら、その裏は、適当に働いています。

 それがバレないように、秘密主義を取り、各部署、各人の職務範囲、責任・権限も曖昧にブラックボックス化しています。

 学歴フィルターがあるような安定した大企業に入社するということは、こういう組織のメンバーになり、会社に言われた部署に配属され、組織の末端で、先輩の下、OJTで仕事を覚えていくことになります。

5.日本企業が欲しい人材

さて、採用人事担当者に、採用人材の重視する能力を聞けば「リーダーシップ」「前向きさ」「学習意欲」「責任感」みたいな、当たり障りのない抽象的な回答が得られます。

 「出る杭たれ」、「組織を変革できる人材」なんて、言っている会社もありますが、こんな話を真に受けて、実行したら確実に会社から追い出されます。

 ずばり、こうした組織が欲する人材像ですが、年功序列・終身雇用、先輩たちが作り上げてきた格式と伝統・秩序を守ってくれる人材を欲しています。

 つまり、先輩達にいつまでも従順に仕えて、先輩たちが年金を貰えるようになるまでしっかり、会社(と先輩)を支えてくれる人が欲しいのです。

 具体的な優先順位を挙げると、以下の通りです。

・組織メンバーにふさわしい格式(出身大学等)

・どんな配属や職務でも文句を言わないこと

・上司・先輩を立てること 逆らわないこと

・独立等の野心がないこと

・一生懸命働くこと

・そこそこ優秀なこと

 上記に該当する人材を獲得するには、学歴フィルターで、出身大学を重視するのが一番効率的です。

 まず、有名大学出身である会社の先輩は、三流大学出身者をメンバーに入れて同格になるのを嫌がりますし、組織の格式が落ちると考えるでしょう。

 次に、有名大学出身者とは「18歳時の偏差値が高かった人」か、「内部進学や推薦等を得られた人」になります。

 そのため、勉強もできて、内申点もよい優等生タイプが多くを占めます。

 こうした人達は、学力以外にも、上への従順さや、忠実さ、我慢強さという性質の点で、優れています。

 また、有名大学出身者の多くは、安定志向の人に囲まれて育ち、自身も安定志向が強いです。今でも公務員、インフラ系が人気です。

 独立等の野心家はほぼいません。

 だから、仕事へのこだわりもなく、独立心、チャレンジ精神に欠けます。

 ※一部の野心家や、プロ志向人材は外資・戦略コンサルや、高度専門職に流れます。

 このように有名大学出身者で、安定した大企業を望む層は、こだわりがなく配属や職務に文句を言わない、上司先輩を立てる(反逆しない)、野心がない、我慢強い、そこそこ優秀という、先輩が望む理想的な性質(会社の色に染まってくれる)を備えているのです。

 以上のように、日本的学歴主義は、18歳までの学力と、従順さ、我慢強さを見ているので、一部の研究・専門職を除いて、ある意味、出身学部や専門性・専門能力はどうでもよいのです。

 だから、30代から有名大学の大学院や、MBA等に通っても、学歴ロンダリングなどと言われて、あまり評価されません。

 博士の就職難の問題も、日本独特の問題といえそうです。

6.欧米の場合は?

欧米の場合は、日本以上の学歴社会ではありますが、学歴のニュアンスが出身校よりは、取得した学位が重視されます。

 欧米の場合は、いわゆるジョブ型雇用であり、ポストに職務詳細(職務内容、権限・責任、報酬)がセットされ、求人の要件として、職業能力として必要な学位等が明記されています。

 つまり、求人に明記された学位がないと、そのジョブに応募できません。

 また、大学教育と、職業能力がリンクしないのは全世界的な課題ではあるようですが、欧米の場合、職業能力資格的な学位が比較的充実しており、日本的な感覚で例えると、学位=資格のイメージが強い感じになります。

 私が国所管の組織で研究員をしていた時代の調査ですが、英国のインフラ分野のエンジニア採用では、ポストに応じてBTEC(レベル1~7まである)と呼ばれる職能資格(学位)が必要になるそうです。

 ※日本においても、医療関係職(医師、看護師、薬剤師など)は、所定の学部卒が条件となっており、その感覚が近いと言えるのかもしれません。

 そのため欧米では、いったん社会に出てから、キャリアアップや、夢の実現のために、大学(学位取得)等に行くことが一般的であり、大学入学時の平均年齢は、アメリカで26歳、OECD平均で22歳です。

 30代の大学生も違和感がない世界です。

 ちなみに平均転職回数は、アメリカで11回、生涯12個の会社を経験している計算です。

 つまり、会社を辞めて大学入学(学位、修士、博士取得)→ 新たな挑戦 を繰り返す感じのキャリアになります。

 自己責任ではありますが、何度でも、何歳でもやり直しが利く社会である点、羨ましいですね。

 ※多くが、学費は本人負担なので必死で勉強するでしょう。親も楽ですね。

7.大手企業に入社する方法

  ようやく本題の、「三流大卒が大手企業に入社する方法」に入ります。

 日本企業の本質や、欲しい人材像を理解した上で、それでも、三流大卒でも安定した大手企業、人気企業に入りたいという人は、その方法を示します。

①新卒入社は諦めた方がよい

有名大学出身者の新卒キップは、人気企業に入るプレミア入場券です。幼い頃から努力して来た証でもあるのです。

 悲しいことに、プレミア新卒キップは、使えるのは一度きりで、20代半ばが消費期限でです。

 だから、有名大学出身者は、一度入った会社を辞められず、会社にしがみつかないといけない苦悩を抱えやすいのです。良いことばかりじゃありません。

 ※参考コラム:日本的エリートの苦悩と弱み

 逆に言えば、30代以降の中途採用であれば、学歴フィルターは少なくなります。

大手企業に入りたければ、中途採用ルートを狙いましょう。

※逆に大手企業で組織規模に合わない新卒大量採用をしている企業には、何かあると考えましょう。

②大手企業の中途採用求人とは

 基本的には、安定した福利厚生のよい大企業は、新卒採用で苦労することもなく、中途退職者も少ないので、中途採用の求人数は少なく、狭き門です。

 でも、求人サイト登録すれば「大手の名刺を持って仕事をしてみませんか?」というスカウトがたくさん来ますよね。

 その実際ですが、安定した大企業の中途採用求人が以下のものに分類されます。

  • プロパー社員がやりたくない職務を押し付けるためもの
  • パワハラマンの生贄(部下)として、潰れる(辞める)前提の採用(※パワハラマンほど、下僕になる部下を欲しがります。怖!)
  • ダイバーシティなど、企業イメージ向上のために、外部人材の採用実績を作るため
  • 専門技術・能力を持った人が不足しており、中途採用せざる得ないとき
  • 本社採用と見せかけて関連企業(中小)への配属させるため(実態は派遣社員)

上記の中で理想は④(専門技術・能力採用)です。

 絶対に避けるべきは、⑤(実態は派遣社員)です。この求人は本当に多いです。ここだけは、気を付けましょう。

 参考コラム:辞め癖が付いた人の生き方【転職回数 多過ぎ】

 ①②③は、入社しても碌なことがありませんが、ガッツと能力があれば、苦難の時代をしのいで、社内に友人が増えればなんとかなります。(組織内では一生、二流社員扱いですが)

 では、理想である④(専門技術、能力採用)に食い込むための方法を次に説明します。

③まずは、小さくても強い会社に入社して「本当のキャリア」を身に着ける

まっとうなビジネスは、「顧客に価値を与えて報酬を受け取る」ことで成り立っています。大企業でも、個人事業でもそれは変わりません。

「本当のキャリア」とは、「顧客(社会)に価値を与えて報酬を受け取る能力を身に着けること」です。

 これさえできれば、独立でも転職(大手も可)でも思いのままで、自由に暮らせます。

 大企業では、職務機能が細分化されており、「本当のキャリア」が身につかない職場がほとんどです。

 そのために、大企業で出世しても、外の世界で通用しない人がゴロゴロいます。

 「本当のキャリア」を身に着けるには、小さくても強い会社に入りましょう。

 そうした会社の要件として以下のものが挙げられます。

  • 企業規模は小さいが、特定分野のシェアが高い、有名な会社、専門特化型企業
  • 営業から商品・サービス提供まで、一連のビジネスの流れに関与できる仕事
  • 専門の知識や技術を提供するビジネス
  • 能力の証明となる、専門資格が取得できる仕事

こうした会社の多くは、人気企業でなく学歴フィルターはありません。

 ※当社の専門分野である建設コンサル業界と技術士などは代表的なものと言えるでしょう。

 皆さんの専門分野や、志向に合わせて研究する必要があります。

 そうした会社で、5年~10年はかけて、その分野で独立できるくらいになるレベル、さらに能力を証明できる実績と資格等も取得しましょう。

※参考コラム:建設コンサルタントが5年で一人前になる方法

 それが、「本当のキャリア」になります。

④大手企業への入社

 特定分野でプロとして独立できるくらいのレベルになれば、その後の人生は、どうしようが自由です。独立でも転職でも、やりたいことに挑戦すれば良いと思います。

 ※ただ、エース級の退職は引き留めがすごくて大変です。

  参考コラム:建設コンサルタントが早期リタイアしてのんびり暮らす方法(FIRE)

 もし、その時点で、大手企業等への入社願望が残っていれば、トライしてみればよいと思います。

 人材紹介業者を利用する時は、専門能力採用になりますので、その分野に特化した業者が良いと思います。

 30代くらいの中途採用は、三流大卒でも、その分野での実績や評価される資格等があれば、「格式」を満たすと考えてくれますので、学歴フィルターのある企業でも、仲間として扱ってくれます。

 実際に私の場合も、中堅レベルで10年の業務実績を積み、技術士を取得し、その後、2年以上の無職・空白期間(勉強してました)のあと、36歳時に、一部上場の業界最大手の建設コンサルタントに入社できましたし、他の大手企業からも引き合いが多かったです。

 ただ、もうプロレベルになって自分の裁量で仕事を回していた人材が、大手企業に入っても、やりにくさと、窮屈さを感じてしまうと思います。

 まあ、大手と言っても「そんなものか」という感じになります。

 私の場合は、たまたま運よく、国所管の研究機関に出向し欧米の建設マネジメント専門の研究員として、海外等を多く回って、楽しいことだらけであり、良い経験が積めました。

 ※参考コラム:リスクを負って挑戦してきて良かったと思えた体験談(弊社別サイトへ移動します)

 しかし、独立したい願望が抑えきれなくなり、40歳目前で独立してしまいました。

 ※前の会社、すみません。

 大手に中途入社した後にキャリア的に意味がないと感じてしまった場合でも、一度、入ってみれば、変なコンプレックスも消え、また「大手の○○社出身」という箔も付くので、次の挑戦をするときに無駄にはなりません。

 やってみても良いと思います。

 まあ、独立できるレベルのキャリアがあるなら、大手企業に中途入社するよりも、独立してしまった方が、断然良いと思います。

 なぜなら、独立して主体的に動いている人間には、大手企業の中途入社などより、もっとずっと良い機会が巡ってくるからです。

 また、サラリーマンが社内で新しいことに挑戦するには、いちいち稟議・決裁で消耗する上に、やらない理由を探す人々に邪魔されますが、独立していれば、よい機会があれば自分で即決し全力投入できます。

 結果として、後悔の少ない楽しい人生が送れる可能性が高いです。 

 参考コラム:中高年が外資・戦略コンサルタントに入社する方法

おわりに

 学歴フィルターに落胆されている方もいると思いますが、プロとして独立できる「本当のキャリア」を身に着けるには、小さくて強い会社の方が、安定した大企業より優れている点を認識していただけましたでしょうか?

 就活市場から無視されている99%を占める中小企業に着目して、「本当のキャリア」を詰める業界・会社を研究しましょう。

 私と同じように、大人になってから勉強に目覚めた後発組(三流大卒)の人。

 能力・実力主義で勝負したい人は、学歴主義の日本社会でも、頭を使えば十分に泳いでいける実力主義の世界があります。

 ※むしろ、最優秀層で挑戦する人が少ないので、ビジネスチャンスに溢れた、競争の少ないブルーオーシャンだったりします。

 参考コラム:独立するする詐欺も悪くない【ある先輩の物語】(弊社別ブログへ移動します)

 見栄とステータスへのこだわりは捨てて、そうした世界で、いろいろな挑戦を楽しんでください。

 応援しております。