辞め癖がついてしまっている人の生き方【転職回数 多過ぎ】

 転職活動において、もっとも苦労するのが「転職回数が多すぎる人」です。長くて数年、場合によっては、1年~半年単位で転職を繰り返している人がいます。

いわゆる「辞め癖」がついてしまっている状態と言えるでしょう。

こうした人のために、何か生き方のヒントになればと思い、コラムを書いてみました。

転職活動が多すぎる人とは

 建設コンサルタント業界は、転職回数がある程度あっても、転職には影響が少ないです。

 仮に40代で、これまでの転職回数が5回程度あったとしても、その中に、長年勤務の会社もあり、また、建設コンサルタントとして即戦力の能力と実績があれば、大手系以外であれば、比較的に良い条件で就職できるでしょう。

 今回のコラムの対象とする「辞め癖」「転職活動が多すぎる人」とは、以下のような場合を指します。

  • 数年~数か月程度で転職を繰り返している(いろんな業種)
  • コアとなる専門性・技術がない

辞め癖がついていく過程について

短期間で転職を繰り返してきた人に転職理由を尋ねると、パワハラに逢ったり、勤務先の経営不振、契約期間満了終了だったり、入社時に言われていたことと違うから、やりたくない職務を命令されたから、などなど様々です。

就職・転職というのは、あたりはずれの「運」が左右します。

離職の原因が、経営不振やパワハラなど同情すべき理由であることも多いです。

※参考コラム:”就職・転職は「運」新入社員時代の思い出

 問題は、退職後のアクションになります。

 大体が、次の就職先を、安易に決めてしまう人が多いです。

よくあるのが、人材派遣系や労務提供型の仕事についてしまうことです。

※こういう求人ばかり紹介する紹介会社が多いので気を付けましょう。

労務提供型の仕事は、職務の責任が少ないためストレスや残業が少なく、サービス残業もなく、30代後半までは、同世代と比較して賃金も悪くありません。

しかし、そうした労務提供型の仕事を何年しても、大体が、なんのキャリアにもなりません

こうした仕事を続ける弊害は「仕事観」に表れます。

「仕事とは、上に言われたことだけ言われるがままにやること」だと思いこんでしまいます。「プロ意識」とは、程遠い世界です。

そして、少しでも良い条件を求めて頻繁に勤務先を変えたり、些細なことですぐに辞めたり、行き当たりばったりな迷走に入ります。

30代前半くらいまでは、焦りも感じず、そういう生活も、あまり苦にならないかもしれませんが、その間に、人材の価値が上がることはありません。

むしろ、年齢を重ねる毎に、年下から指示を受けたり、怒られたり、馬鹿にされたりして屈辱を感じることや、組織内でのトラブルも増えてきます。

そこで30代半ばも過ぎてから、なんとかしようと思っても、もうその世界から抜け出すことが難しくなります。

 こうした人の中には勉強家で、技術士を取得している人もいます。

 しかし、例え技術士であっても、具体的な即戦力となる専門性・業務能力もプロ意識もありません。

 (※現在の技術士試験は、経験論文等がありません。)

 また、採用側は、いくら技術士であっても「どうせ、すぐ辞めるのでは」、「何かトラブルを起こすのでは」という感じでかなり警戒してしまいます。

 逆に、40歳近くになって、建設コンサルタント未経験の人材であっても、前職(異業種)での長年の勤務実績があれば、受け入れる会社は結構あります。

 そのことからも転職回数が、あまりにも多いと、かなりのマイナス要因となることが推測できます。

辞め癖がついてしまった人の人生戦略

「辞め癖がついてしまっている」と自覚がある人で、それでも建設コンサルタントになりたい人のために、具体的な方法を述べます。

 まず目標を「どこでも食えるようになること」とすべきです。

具体的には、人材需要が一番多い分野で実績を積み即戦力となることです。

 詳細には

①設計分野に絞る

 建設コンサル的な仕事は、建設事業の流れから、調査、計画、設計、施工監理などの幅がありますが、ずばり「設計」に絞ってください。

 設計分野が人材の需要が多く、人材の供給が少ないので、生きていきやすいです。

②専門は道路」、「構造」、「河川」、「下水道」に絞る

 建設分野の中でも、道路・河川(と、その構造物)は、最も基本のインフラであり、膨大なストックがあるため、業務が多くあります。

 道路、河川、構造、下水道(大都市圏のみ需要大)の設計実務が積める仕事をしましょう。

③就職先は、自治体の業務が多い中小企業、地場企業で十分

 大企業で国交省等のプロポの大型案件を回せるスペシャリストレベルを目指す必要はないです。実現可能性は低いです。

 自治体レベルの仕事を、一人で回せるようになることの方が、実現性が高いです。

 専門技術も、道路、構造、河川等のどれかに、ある程度専門性があり、その他も薄く広くこなせるようになれば、全国どこでも転職できます。

 そのため、就職先は、自治体業務中心の中小企業、地場企業の方がよいです。

 雇用形態は、派遣より直接雇用の方がよいです。正社員にこだわらず、設計実務経験が積めるなら最悪アルバイトでもよいでしょう。

④目標レベル

 建設コンサルの設計業務経験(道路、河川、構造など)が積める会社で働き、3年~5年程度で、自治体発注業務を一人でこなせるようになるべきです。

 ※参考コラム:「建設コンサルタントの新入社員が5年で一人前になる方法

 それが即戦力の最低条件です。併せて技術士補、RCCMくらいは取りましょう。

 その状態になれば、勤務先で正社員として、それなりに処遇してくれるはずです。

以前よりはずっと転職もしやすくなっています。

 さらに、技術士も取得できれば、人材価値も上がり、もっと上も目指せます。

 また、業務を一人で回せようになれば、人間関係トラブルも減りますし、自分に自信がつけば、人間関係も苦になりにくくなります。

仮に、その時点で自身に設計への適性がないと判明したら、それから施工監理や点検・調査等に進めばよいです。設計経験があることで、施工監理や調査でも価値が上がります。

おわりに(現実にはどうか)

 私自身は、能力的に可能性のある人材には、上記のようなやり方勧める場合が多いです。やれる人はこれが一番ベターだと考えています。

 ただ、このやり方は、修行のため数年単位でステータスと収入がダウンします。そういした投資的な人生戦略の発想が必要になります。

そのため、能力的にできる人でも、現実には、実現することに大変な困難さを感じています。

 その理由は、「辞め癖」がついている人に共通的な傾向として「理想のホワイト職場幻想」を持っていることがあります。

 「自分が苦労しているのは職場に恵まれないから」

 「安定した大企業、ステータスも給与も労働条件も福利厚生、人間関係もよく、一生養ってもらえる理想の職場に就職したい」

という願望を捨てられないことです。

 確かに公務員やら大手企業やらに理想郷は存在しているかもしれませんが、こうした人の出入りが少ない職場は、同僚・先輩後輩等の人間関係(非公式組織)が圧倒的に強い力を持っています。仲良しクラブ的な、一生続く中学校みたいな世界です。

そのため、このような理想郷でも人間関係に苦悩している人が少なからず存在しています。

 ※参考コラム:「公務員からの転職希望者が増えている件

 辞め癖がついているような人は、組織の人間関係が苦手な人が多く、途中から「理想郷」に入れてもなじめないと思うのですが、なかなか自覚できないみたいです。

 古今東西を見ていても、どこかにあるユートピアを探し求める思想は人間の本質のような気がします。

 そのため、私が勧めるような人生戦略にすごく納得された人でも

 実際に転職活動で、設計修行ができる企業に紹介すると「安定が、福利厚生が」とこだわり始めます。

 また、修行のためと分かっていても、一時的な不安定さや、収入ダウンを受け入れません。

 なんていうか覚悟というものが足りないのだと思います。

 そして、他の紹介会社が勧める福利厚生のよい大手関連企業のエンジニア派遣会社や、労務提供型のキャリアにならない仕事に流れて、結局、今までと同じ、目の前しか見えない行き当たりばったりの生き方に戻っていきます。

 「どうして、すぐに流されてしまうのだろうか?」と、私自身が無力感を感じてしまいます。

 「人を助けることは難しい、手を差し出してもすり抜けてしまう。

できることは愛すること。相手を理解できなくても愛することはできる」

という、ある映画の最後のシーンを思い出しながら、少しでも、そうした人の助けになればと思い、このコラムを書いてみました。

 ご参考になれば幸いです。

このコラムをシェアしていただけると嬉しいです。