挨拶を見ただけで、どこまで出世するか分かるだと!

これまでに、「新人の挨拶を見ただけで、どこまで出世するかわかる」と豪語する人に何人も出会ったことがあります。

 昔から、そのようは話を聞くたびに「馬鹿らしい」と内心思っていましたが、それだけ豪語するからには、ご本人の中では確信があり、事実に基づいていることになります。

 そこで、印象に強く残る三つの例を説明し、その背景について考察してみたいと思います。

ケース1:新入社員研修時

私は、新卒で某重厚長大系メーカーのグループ会社の建設コンサルタントに入社したのですが、グループ全体が絵にかいたような年功序列・終身雇用の会社でした。

 ※まあ、福利厚生もよくホワイト企業でしたが

 新入社員時に、グループ企業全体の合同の新入社員研修があり、二泊三日で研修を受けたことがあります。

 そこでは、プロの研修講師が来て、マナーとか、5W1H、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)などの講義や、実習を受けるのです。

 なぜか研修参加企業間でのスポーツ大会まであったり、なかなか楽しめました。

 その時の講師は、見るからに体育会系の元気溌剌とした おじさんで、もう長年、大企業向けの新人研修講師をやっているとのことでした。

 マナー研修では、本番さながらに、挨拶や名刺の受け渡し、さらに、おもちゃの電話を使って、電話の受け答えの実演をやらされて、それを点数化されたのです。

 そして、最終日に成績優秀者の表彰が行われるのです。

その年は、当然ですが、私が受賞・・・・・しませんでした。 するわけないか

 前年は、私の会社の先輩が最優秀賞を受賞したそうです。

 その研修講師曰く、「新人の挨拶を見ただけでどこまで出世するか分かる」、「彼(先輩)は、本当に優秀だったから、将来、必ず会社を背負って立つ人間になる」、「君達も先輩を見習いなさい」との訓示を受けました。

 会社の総務課長(親会社からの出向者)も、「彼(先輩)は優秀」だそうで、課長の言う、将来会社を背負って立つ候補3人に入っていました。

 私も、その先輩は「きっと優秀なんだろうな」と思っていました。

 ところが、その先輩は、入社5年目くらいで中途退職しました。転職先は、某大企業でしたが、建設分野とは全く関係がなく、正直、何のキャリアにもならなそうな仕事でした。

 当時は、建設不況前で、建設コンサルタントとして奇跡のホワイト職場で残業も少なかったので、激務が理由ではありません。

 後で聞いた話では、下働き時代(3年目くらいまで)は、評価が高かったが、その後、業務を任せることができず伸び悩んだ。とのことでした。

ケース2:研修講師になるための研修会

私が中小企業診断士を取得し、未経験で独立して、あれこれ迷走していた時代ですが、企業研修(管理職研修や新人向け)の講師になるための研修会に参加したことあります。

 個人的には、研修講師は興味がなかったのですが、当時、仕事がなくて、毎日が日曜日状態でもあり「食うためには何でもやらなくては」といった感じでしたので、さらに「無料」でもあり参加しました。

 ※中小企業診断士になると、こうした機会が結構あります。

 その時の講師は、某大手、元国営通信会社の人事部長とのことでした。

 その講習会は、結構ためになったのですが、その大手人事部長の話の中でも、「新人の挨拶を見ただけでどこまで出世するか分かる」という話が出て来ました。何十年の経験の中から喋っているので、確信を持っていました。

 その時の内心は、「挨拶で能力分かるなら、採用試験は、挨拶だけでいいだろ?」と思っていました。

 こうした、企業向けの研修会講師になるための研修を受けて、つくづく思ったのですが

 自分自身が、新人時代に教育担当から1年間、無視され続けたり、先輩方を「生意気な!」と怒らせた経験が何度もあり、日本的組織をドロップアウトした社会不適合者なのに、とてもじゃないが「社会人とは」なんて他人に講釈できないな~と感じてしまいました。

 ※参考コラム:「就職・転職は運【新入社員時代の思い出】」

        「日本的組織の意思決定は「〇〇さんが怒る」で決まる説

        「経営改革でひどい目に遭った話

ケース3:挨拶・礼儀が出世に繋がったケース

建設コンサルタント業種は、個人の能力差が数値で明確に出てしまう職業です。

 ※会社は数値を曖昧にしていますが、大体はみんな分かっています。

 コンサル業務は、業務の担当者がほぼ一人で、複数業務並行して行い3千万の売上と所定の利益を出さなければなりません。

 できる人は、その何倍もやれますし、ダメな人は、とことんダメです。

 ダメな人は、数値以外も、顧客とのトラブルもよく起こします。

 その原因は、理論的思考能力、優先順位が付けられない、問題解決能力など、いろいろ考察できますが、端的に言えば、的外れ、常識的な判断力に欠けると言えます。

 こうしたコンサル業でダメな人は、誠実で礼儀マナーがよく、先輩・同僚からは好まれるタイプが多いです。

 そのため入社後、数年間の上司の下働き時代は評価が高かったりしますが、その後、数値的に実力の無さが露呈してしまいます。

 下に見ていた同期や後輩に、追い抜かれていくことから、不貞腐れていくケースが多いです。

 ※参考コラム:「業務から逃げる達人の思い出

 多くの建設コンサルタント会社は、こうした人を養う余裕がないので、行政出向に出されてしまうケースが多いです。

 出向は、年いくらで、人を出してお金が貰える業務であり、こうした人でも確実に利益をもたらします。

 ※結果として、行政出向が、業界内で下に見られる現実がありますが、個人的には、一人前になった技術者は、現場を知るために一度は行くべきだと思います。

 参考コラム:「施工監理・発注者支援はキャリアになるか

 ところが、建設コンサルタント業務では結果が出せない人が、行政出向した途端、出向先で高評価をいただく事例がかなりあります。

 発注者から「なぜ、こんなに優秀な人を出してくれたのか?」、「最上級の上の評価S」などと言われると、「本当か?」と話題になったりします。

 そして、そのまま出向先の正職員になってしまった人もいますし、相当、出世した人も知っています。

 ケース1の先輩も、今頃、結構出世しているのかも。

考察(挨拶を見ただけでどこまで出世するか分かるの真偽)

これまで「挨拶を見ただけでどこまで出世するか分かる」と言っていた人の共通点は、年功序列で終身雇用の大企業の人である点です。半分役所みたいな組織です。

 さらに、その組織で出世し、人事に関係する人間の言葉でもあります。

 このことから考察すると

 「挨拶を見ただけで、どこまで出世するか分かる」という組織、年功序列で職務も権限・責任も曖昧で、組織内をジョブローテーションするような働き方では、数値的に実力が測れるはずもなく、人事評価は「先輩の主観」で決まっていることが考察できます。

 そのため、出世には、表面的な、礼儀正しさ、挨拶、従順さといった点が重要な要素となってきます。先輩に気に入られる能力とも言えます。

 そして、建設コンサルタントのような実力が数値的にバレやすい組織では、結果が出せない人間でも、そういう組織では、超・高評価を得られてしまう事実から考えると、仕事の大部分が「本当は、誰でもできる」「個人の能力差がつかない」職務で構成されているはずです。

※まあ、誰もが自分の仕事が「いかに難しいか」アピールしますが、実際に、社内で30年も経験を積んで「なんの専門性ありません」とか、専門能力を聞かれて「よい部長」などと答える人に複数、遭遇しています。

おわりに

私も大学3年時までは、楽と安定優先の公務員志望だったのですが、もし組織の空気を読まない私が、役所のような「挨拶を見ただけで、どこまで出世するか分かる」という組織に入っていたら確実に、先輩に評価されず不遇な人生だったと思います。

 ある出来事で急遽、建設コンサル志望に変えてギリギリセーフでした。 

 参考コラム:「建設コンサルタントを選んだ理由とその後

 従順でまじめでも能力には自信がない人こそ、勉強を頑張って、良い大学に入り、安定した大企業、特に国際競争の無い産業、インフラ系や公務員を目指しましょう。

あと20年は大丈夫です。多分。

 その後? その頃は社会のセーフティネットが強化されていると思います。

 参考コラム:なぜ挑戦できないのか「ベーシックインカムは実現してしまう件

 能力に自信があり実力で勝負したい人は、「挨拶を見ただけで、どこまで出世するか分かる」なんて上層部が言っているような、安定した大企業に入っちゃだめです。

 組織内で埋没し、苦悩すると思います。

 リスクがあっても本当の実力主義の世界を目指しましょう。

 ご参考になれば幸いです。