もし建設コンサルタントが中小企業診断士を取得したらどうなる【技術士の次は】

当社に、一般社会の中でエリートと言える人達から、キャリア相談が来ることがあります。

 学歴、勤務先のステータスも申し分なく、業務実績もあり技術士も取得し、現状に大きな不満もありません。今後、普通にやれば、社会的成功者としての人生を送れるものの、これから先の人生が見えてしまった閉塞感というか「これでいいのか?」と悩む感じです。

 もうエンディングが分かっている面白くもない映画を見る苦痛に近い感じです。

 実際に、このコラムを読んでいる人の中にも同様の状況で、悩んでいる人が多いのではないでしょうか?

 資格取得に関して言えば、博士や、技術士の総監や別の専門科目の取得を目指すというパターンが多いと思います。

 その目的は「資格手当も付くし、人生の保険も増えるし、同僚と多少の差別化になり社内で尊敬されて、出世しやすいから」といった感じで、名刺の飾りを増やす、箔付け目的の人が多いと思います。

 当社コラムでは、挑戦(転職や独立)などと書き立てていますが、「今更、新しい所で苦労したくない」と、興味がない人も多いと思います。

 そのような、技術士も取得し仕事も順調なのに、漠然とした閉塞感、物足りなさを感じている人には「中小企業診断士」の取得を勧めています。

 理由は「中小企業診断士」は、こうした人達の閉塞した現状から解放されるために、ピッタリな資格だからです。

 実際に、私も「技術士」の次に「中小企業診断士」を取得したことで世界が大きく広がりました。

 しかし、建設関係の人は「診断士」と聞くと、「」くらいしか思い浮かばないと思いますので、今回は「中小企業診断士」ついて解説したいと思います。

1.中小企業診断士とは

中小企業診断士は、「経営コンサルタントの唯一の国家資格」と言われています。

 ビジネスマンの取りたい資格ナンバーワンとも言われています。

 中小企業診断士の仕事は、中小企業への経営診断や助言などを行うことです。いわゆる経営コンサルタント的な仕事になります。経営の専門家ですね。

 皆さん「中小企業」と聞くと小さな会社を連想すると思いますが、日本企業の99.7%が中小企業です。

中小企業の定義(中小小企業庁の)は、例えば製造業では従業員300名以下または、資本金3億以下が中小企業であり、場合によっては売上数兆円の会社も「中小企業」となります。

 今は、誰もが知っている世界企業(メーカー)が、わざわざ減資して中小企業になったりしています。(中小企業は法人税率が低いため)

2.中小企業診断士は独占業務がない?

ビジネスマンの取りたい資格ナンバーワンにも関わらず、中小企業診断士のネット上での評価は、なかなか辛辣です。

 その中で、中小企業診断士は国家資格でありながら「独占業務がないから食えない、価値がない」というコメントが多くみられます。

 確かに技術士も建設部門や上下水道部門などは、建設コンサル業務における独占業務資格であり、そのことが資格の価値を高めていることは事実です。

 しかし、「資格の価値」を独占業務の有り無しのみで論じることは、危険です。

現状、多くの独占業務のある国家資格、士業が厳しい状況にあります。

 弁護士ですら食えなくて廃業する人がいるのです。

重要なのは、資格者の需要と供給のバランスです。

※「モノの価値を決めるのは需給」    覚えておくとよいです。

 中小企業診断士は、元々は、行政が中小企業の育成や経営支援を行うことを目的として作られています。

 これは「公的支援業務」と呼ばれています。

 現状でも経済産業省管轄だけでも毎年数千億の予算規模の中小企業支援が行われており、その他、他の省庁(国交省も)、都道府県、市町村、地銀、経済団体などにより、全国津々浦々で「公的支援」が行われています。

 これら、公的支援は、実質的には中小企業診断士の「独占業務」となっています。

 診断士業界の景気(需給)は、政策等に左右されますが、過去に厳しい時代もあれば、バブルもありましたが、全体的には、悪くないです。

 特に大都市圏から遠く離れた地方は、公的支援を行う診断士は常に不足し、仕事はいくらでもあるような話を聞いています。

 個人的な感覚では、その辺の士業よりは、独立して食べていける資格です。

 中小企業庁統計では、中小企業診断士の40%が年収1,000万以上、年収3,000万超は4%もいます。

 ※参考コラム:「秒速で1,000万円を稼ぐ中小企業診断士

        「中小企業診断士が年収3000万のカリスマコンサルタントになる方法

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3.中小企業診断士試験は難しいのか

 中小企業診断士の難易度ですが、経営の専門家として他人の会社に助言するのですから、当然ながら相当レベルの経営に関する知識や、分析・助言能力が求められます。

 試験は、経営全般の知識を問われる一次試験(7科目、合格率20~50%くらい)、経営診断能力を測る二次試験(4科目 合格率20%弱)に分かれており、一次二次を通じた最終合格率は数%と狭き門です。

また、合格までの勉強時間は、一般に1,000時間程度と言われています。

合格率数%、必要勉強時間1,000時間と聞いて、尻込みしてしまう人も多いと思います。しかし、ここで落胆する必要はないです。

 合格率数%のカラクリですが、この資格は受験資格制限(学歴や業務経験)がなく、小学生でも受験できます。(高校生の合格事例あり)

 誰でも受験可能なのでレベルの低い受験者も交じります。また、働きながら1,000時間の勉強が必要とすると数年単位の長期的な計画が必要になります。

 世の中、長期目標に対して地道に努力した経験がある人は少なく、多くが1年くらいで、なんだかんだと理由と付けて挫折してしまいます。

 そして、挫折した人は「中小企業診断士は意味ない」と言って回るようになります。

 ※参考コラム:「中小企業診断士への低評価を考察する

 建設コンサルタントの技術士であれば、難しい専門書を読むことに慣れており、また長年に渡り、コンサル業務(調査、分析、、報告書作成、顧客への説明など)を朝から晩までやってきた経験があります。

 さらに、一日中、論文を書き続ける技術士試験を突破していることもあり、中小企業診断士試験は、分野は違うものの、能力的に取り組みやすいと言えます。

 中小企業診断士の試験で、難解で理解できない内容はほぼありません。

また、人気資格のため大手受験予備校等の各社の参考書、スクール、オンライン学習教材等は、豊富かつ良質なものがたくさんあり、勉強しやすいです。

勉強時間を、土日、平日の通勤時間を含めて、日平均1.5時間確保できれば、年間勉強時間は500時間になります。理論的には、三年(1,500h)頑張れれば、かなりの人が合格できるのではないでしょうか。

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4.建設コンサルタントが中小企業診断士を取得するメリット

①経営・マネジメントの知識を体系的に習得できる

  中小企業診断士の取得するメリットで一番大きなことは、なんといっても、経営マネジメントの知識を体系的に習得できることです。

 マネジメントとは「制約条件を考慮した上での最適化」のことであり、「問題解決目標達成の方法」と言い換えることができます。

 経営マネジメントとなると、簡単に言えば、ビジネスの最適化、下品な言い方をすれば、「お金儲けの方法」となります。

 誰でも、どこで何をやるにしても、「問題解決・目標達成」と「お金を稼ぐ」ことが必要になります。だから、経営マネジメントの知識は、重宝することになります。

 ただ、ほとんどの人は「経営マネジメント知識を習得」と言われても、ピンとこないと思います。

 多くの人は、経営マネジメント能力を、人格的な曖昧な概念で捉えており、日本企業のマネジメントクラスには「自分は経営マネジメントの専門家」と信じている人がいます。

 ところが、実際は、年功序列で出世した管理職で、まともな経営の知識がある人は、ごく少数派であり、逆に財務諸表も読めない人がたくさんいます。

 自分は経営マネジメントに詳しいと自認する人は、是非、中小企業診断士の過去問に挑戦してみてください。恐らく、まるで解けません。基礎的な経営知識すら足りていないことが自覚できると思います。

 中小企業診断士は、まず、経営に関する基礎知識を網羅的に勉強する必要があります。さらに、ロジカルシンキングなどの問題解決技法を学び、それらを駆使して、実際の事例に対して経営診断をするような、実践的な勉強を行います。

そして、試験を受けて合格しなければなりません。

 経営知識を網羅的かつ体系的に理解するには、診断士試験のように、基礎知識(一次試験)→応用(二次試験)、といった形でマイルストーンを明確にして到達点をクリアするやり方が効果的です。

 一方、社会人MBAですが、エリート層ほど、ステータス、箔付けのためにMBAを選択する傾向があります。

資格試験と違い、MBAは学位であり、入学さえできれば大体は卒業できる確実性が好かれている点も大きいです。

もし、30代以上の建設コンサルタントがMBAに通えば、生徒は何百万も払っている「お客様」でもあり無事卒業できて、学位も頂けると思います。

でも、元々が経営の基礎知識もない状態で座学を受けて、卒業できても経営知識が希薄なままになる可能性はあります。

経営知識を習得する目的なら中小企業診断士の方が、向いていると思います。(費用も圧倒的にかかりませんし)

※個人の見解ですので、好きな方を選べばよいと思います。

 ※ちなみに、一次試験に合格していれば、「MBA」と「中小企業診断士」を同時取得できる「養成課程」と言われる制度もあります。

 ※参考コラム:「養成課程で中小企業診断士に確実になる戦略について

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②実務能力が上がる

  建設コンサルタントで活躍されている方であれば、分析、比較検討、提案等のコンサル実務に、熟練されているはずです。

 しかし、ロジック面、ロジカルシンキングや問題解決技法等を本格的に勉強・訓練した人は、少ないと思います。診断士の二次試験勉強では、実際の中小企業の事例をもとに、問題解決技法を駆使して診断を行うような訓練をひたすら行うことになります。

 こうした訓練は、既に経験的に体得していたことに対して「そうだったのか!」と大きな気づきや進歩が得られるはずです。実際に建設コンサル業務の能力も向上します。

 業務能力の向上を感じた事例として、私の場合、診断士勉強中ですが、大手コンサル・国所管の研究機関で、建設マネジメント研究に従事しましたが、コンサル能力が飛躍的に向上したことを実感しました。

通常の建設コンサル分野の業務でも、意外と社会経済評価の関わる業務もあります。費用便益(B/C)の分析などは、DCF法と呼ばれるものがベースですし、事業のフィージビリティスタディなどを、やる機会がある人もいると思います。

そうしたものには直接、役に立ちます。

マネジメントとは、目標達成、問題解決能力のことなので、設計等されている方でも、業務の管理能力も上がりますし、経営の勉強をするのですから、経営・管理層にいる人は、直接的に経営知識が役に立つこと間違いなしです。

③世界、視野が広がる

 中小企業診断士試験合格後の世界ですが、中小企業診断士協会などで多くの研究会、プロコン塾など、様々なコミュニティ活動が活発に行われています。

 中小企業診断士は、受験資格制限がないため、あらゆる職種の人の集りです。銀行、、メーカー、コンサルタント、ITなどです。会計士、税理士、社会保険労務士のダブルライセンスも多いです。中には弁護士、医師もいたりします。

 また、独立している人も多く、様々な分野のプロがいます。

 ※中には、所属のステータスだけが拠り所のマウンティング爺や、新人を食い物にするような側面を持つような人達もいます。

 ※参考:「中小企業診断士とひよこ食いについて」

 診断士取得後、長期的展望で、多少の紆余曲折がありながらも、主体的に、自分が関わるべきコミュニティを選択していけば、かなり世界が広がります。

 私の場合、診断士取得後、様々分野のプロの経営コンサルタントと知り合いになれました。

例えば、一人で何千万も稼いでいる人、全国セミナーで渡り歩いている人、自ら起業している事業を行っている人、社会活動や何か変わったことに挑戦している人、などなど、多様な人達と関わることで、いろんな人の生き方に触れられます。

さらに、企業の経営支援に関わる機会もあります。

そこで、中小企業の実態を知ったり、企業経営者と直接触れる機会があります。

創業社長などは、主体的な人も多く、多くの挑戦の成功、失敗談を聞くことができました。

私個人は、こうした活動で、思いもよらぬビジネスがあったり、思うがままに生きている人達の行動力に驚いたりすることが多く、独立数年後に自分自身の主体性の無さを、初めて自覚できました。

ほとんどのサラリーマンの人間関係は、会社と学生時代の友人くらいであり、同質的になりがちだと思います。

中小企業診断士を取得すれば、こうした別世界との交流により視野が広がり、世界観、価値観も変わってくると思います。

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④挑戦(独立、)が怖くなくなる

 普通の人は、独立に大変な恐怖心を持つと思います。

その理由として、「安定収入を失う」、「肩書・ステータスを失う」ことへの恐怖が大きく、また多くが、独立に失敗した場合、独立→借金→失敗→破産というイメージを持っています。その恐怖の根本原因は「未知の世界」です。

ところが中小企業診断士を取得し、経営や起業の知識を習得し、実際に企業経営者に触れたり、周りの挑戦や独立している人等に触れることで、独立に必ずしも借金の必要はないこと、自分で負える範囲でリスクを負って、コントロールすれば破産のリスクはほぼないことが分かります。

そのため、独立そのものへの恐怖心はかなり下がるでしょう。                      

また、「若い頃からリスクを負って起業など挑戦してきたプロのコンサルや創業社長」と、「年功序列企業で出世したマウンティング爺」を見比べると、どうしても前者が輝いて見えますし、目標にしたくなります。

だから、肩書・ステータスへの執着は、薄れていきます。

しかし、中小企業診断士を取得してもなお、他業種の大企業に勤めるサラリーマンの多くは、つぶしが利きません。仮に独立に失敗して再就職をしようと思った場合、40代以上では、厳しいでしょう。だから、必死に組織にしがみつこうとしている人も多いです。

 ※参考コラム:「48歳定年制の話

一方で、建設コンサルタントの技術士であれば、状況はずっと恵まれています。

 建設コンサルタントの下請けとして独立しても年収1,000万くらい稼ぐのは難しくありません。仮に独立に失敗しても再就職で前職レベルの収入を得ることも容易です。

もう人生の保険を持っているようなものです。

※参考コラム:「技術士は人生の保険になるか?

それに、経営の専門家であれば、独立し成功した場合、会社をさらに成長させるやり方も、自分で分かるはずです。

つまり、建設コンサルの技術士が、診断士を取得し経営知識を持てれば、失敗最悪ケースでも現状維持レベルのセーフティネットを持ちながらも、成功した場合は、社員100人位の建設コンサル企業のオーナー(兼経営者)だってなれる可能性が十分にある状況にあります。

建設コンサルの人は、これほど「おいしい状況にいる」ことを自覚できないと思いますが、診断士になれば体感的に実感、納得できると思います。

⑤副業(複業)、リタイア後の活動に

 現在、新たな雇用形態としてジョブ型雇用への移行や、フリーランス人口の増大が起こっています。

また、大企業などで週休三日制(減給もセット)と合わせた副業解禁といった動きがあり、今後の働き方は、複数の仕事を持つ副業(複業)が当たり前になると言われています。

終身雇用の崩壊の序章とも言えますが、この流れは変えようがないことは明白であり、個人が会社に頼る時代が終わりになることを理解する必要があります。

 安定重視やリスク面で考えると、不安の大きな時代にはなりますが、ポジティブに捉えれば、建設コンサルタントとしてのキャリアだけでなく、他の業種のキャリアも同時に追求できる時代、より多くのチャレンジ、面白い人生が歩める時代、人生二毛作、三毛作の時代が来たということです。

その準備として中小企業診断士は、お勧めです。

起業やビジネスの専門家レベルの知識があれば、自身が副業等を行う時に必ず役に立ちます。

また、前記の「公的支援業務」ですが、経営コンサル未経験でも中小企業診断士であれば、行政への専門家登録等が可能で、公的支援に参加ができます。

公的支援の日単価は、2~5万程度で、副業としては、結構な額を頂けます。

※中小企業診断士の副業が本業の収入を超える人もいます。

また、60代デビューで公的支援で活躍されている方も多くいます。60代以上が、診断士業界では、むしろ多数派です。(現役時代より稼いでいる人もいます)

リタイア後に、生まれ故郷に戻って技術士として地場の建設コンサルタントの技術指導等をしながらも、公的支援機関等の経営専門家(中小企業診断士)として地域の中小企業に経営支援を行うなんてこともできます。理想的な老後の一例ではないでしょうか?

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おわりに

 建設コンサルタントの技術士にとって中小企業診断士の取得は、個人にも会社にも良いことづくめなことは、分かっていただけたと思います。

 実際に、私自身が、技術士の次に経営マネジメントを徹底的に勉強し、中小企業診断士を取得したことで、その後、あり得ないような機会にも恵まれましたし、楽しいことばかりだったこともあり、「どうしてみんなも、やらないのだろうか?」とも思いますし、順風満帆なのに漠然とした閉塞感を抱えている人の相談を受けると、つい中小企業診断士の取得を勧めてしまいます。

 ※参考コラム:「建設コンサルタントを選んだ理由とその後

 「経営コンサルタントと建設コンサルタント違いと共通点

 

 現在、相談者の中から複数名が、診断士取得に挑戦中です。(全員が技術士です)

 

 今後、建設コンサルタント業界で技術士・中小企業診断士のダブルライセンスが、増えることを期待しています。

 将来、一緒に何か面白いことができたらよいですね。

 

 ご参考になれば、幸いです。

 

  参考コラム:「建設コンサルタントを人気職種にする方法

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