20代の技術士合格者が増えている件【建設コンサルタントの将来像とは】

私の場合、30歳までに技術士合格を目指していましたが、実際に合格できたのは33歳でした。

 つまり、入社以来10年以上の実務経験と勉強の結果、ようやく合格できました。

 ※それでも当時は、会社の最年少合格記録だったのですが(プチ自慢です)

 

大手コンサルタントの人から聞いたのですが、最近は、20代それも入社3年目にして技術士に合格してしまう新人が増えてきたとのことです。

午前中に経験論文があり、二次試験の面談を45分もやっていた時代に受験していた世代からしてみると、信じられないことです。

 当時は、20代合格者は、年間1名程度(なぜか都市計画の人)でした。

 技術士統計情報を見ると20代合格者はH27年94名→R2年196名と、5年で倍以上に増加しています。 

年によって、ばらつきはありますが、若年者でも合格できる資格になってきています。

 

 入社3年目に合格する人は、大学でJABEEの過程を終了し、修士課程も実務経験に含まれるので、大学院卒は、入社後3年目には実務経験4年となり二次試験受験可能となります。

 そこで、一発合格するパターンになります。

 つまり、27歳で技術士になる人がいます。

 

 こうした若年で合格する人達は、入社時から、技術士取得のための学習意欲が全然違うそうで、本当に、一生懸命勉強するらしいです。

※当社コラムで「技術士は人生の保険になるか」などと、書いている影響もありそうな気がします。

 

 さて、こうした20代技術士に対して、大手コンサルでは、経営方針として、積極的にキャリアになる業務を投入し、管理技術者になる場合もあるそうです。

 そうなると、40代のベテラン(RCCM)が担当者で、20代若手(技術士)が管理技術者なんていう、変な感じになってしまうケースもあります。

 まるで、学生にしか見えないキャリアの課長と、40代係長(調査職員)という国交省業務あるあるみたいな状況が、建設コンサルタント側でも出てきたわけです。

 

 社内では、「入社3年目で技術士なんて、けしからん」、「まだ青二才のくせに」という内心の思いはあると思いますが、大きな業務を任される若手は、なんだかんだで、頑張って業務をこなしていくので、「結構やるなあ」という感じで評価が高いそうです。

 

 大手コンサルの経営陣側の、若手技術士に大きな業務を投入する意図ですが

最近は、受注のかなりの部分をプロポーザル方式が占めます。

 その場合、管理技術者の「業務経験・実績」と、「手持ち業務量等」の制約があるために、人材不足が、受注機会の足枷になってしまうことがあります。

 60代ベテランが引退していくこともあり、早急に、業務経験豊富な管理技術者の頭数を増加させる必要に迫られているからです。

 

 会社としては、学習意欲を失ったアラフォー世代に教育支援しても、その費用対効果が薄いこともあり、いっそ学習意欲が高い新人に集中投資しようかという話になっているそうです。

 

 つまり、今は、会社から教育支援をしていただけて、20代で技術士も合格できて、合格後は、良い業務を、責任のある立場で任せて貰える。どんどんキャリアも積める時代になってきました。

 やる気のある人には、本当に良い時代になってきています。

 

 さて、このような状況変化を受けて、建設コンサルタント内部の人、特に若手へ、今後の人生設計の助言をしたいと思います。

 

1.将来 起こる社会の変化

自分自身の人生設計を考える場合、まず、将来の社会構造、働き方がどう変わるのか認識することが重要です。

 今後10~20年くらいの将来に間違いなく起こる社会変化を以下に整理します。

①活躍期間が30年 長くなる

 20代で技術士になり業務で活躍できるということは、昔であれば、40代、50代でたどり着いた境地に、今は、30代前半くらいにはたどり着ける時代です。20年以上の時間短縮です。

 さらに、引退・定年時期も、後ろに伸び続けています。

 今後は、企業組織もフラット化し、従業員は総現役エンジニアのような形が広がっていきます。なぜなら、その方が、企業の利益が増え、従業員の労働時間も短く、給与も増え、業種の魅力が高まれば優秀な人材が集まり、社会・顧客の利益も増える「三方良し」となるからです。

さらに超少子高齢化社会で経済を維持するためには、現役で働ける期間を如何に長くするかが最大の課題であり、政策的にも後押しされるようになるでしょう。

 みなさん、「人生の活躍期間が30年は伸びる」ことを認識する必要があります。

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②個人間の結果・報酬に差がつく時代

 組織の中には、「労働」=「苦悩」的発想で、仕事から逃げ回って生きている人と、「労働」=「キャリア」と考えて働き、能力開発を続ける人間がいますが、十年以上の年月を得ると数倍の能力差、人材価値の差が生じます。

参考コラム:「キャリア開発はなぜ挫折しやすいのか

 しかし、現状は、人材価値の差が数倍あっても、報酬の差はあまり生じません。

一度、正社員として大企業や役所に入ってしまえば、年功序列の終身雇用で定年までの雇用と安定収入が保証される社会というのは、日本的「結果の平等型社会」の理想形と言えるでしょう。

 しかし、やっても、やらなくても結果が大して変わらないのなら、どの組織も、やらない人が多数派になり、国際競争に敗れ、国家全体が沈没していくしかありません。

 企業がじり貧になりつつも、正社員の中だけでの「結果の平等」を維持するために、正社員以外の、派遣、嘱託、契約社員、重層下請け中抜き構造、下請けたたき、偽装請負などワーキングプア的な労働問題を引き起こしています。

 現状は、同じ労働成果に対して、年齢、雇用形態(正社員か派遣など)、性別などで処遇に差が生じる状態であり、「機会の平等」的観点からは、努力しても報われない不公平な社会と言えます。

 どちらが正しいのか、立場によって意見は分かれますが、そうした善悪論は抜きにして、今後、世界全体に「機会の平等」が拡大していくでしょう。

なぜなら、「結果の平等」と「機会の平等」の社会が競争すれば、必ず「機会が平等」な社会の方が、圧倒的に活力があふれる豊かな社会になるからです。

一方、「結果の平等」を重視した社会は、すべてがじり貧になっていくでしょう。

今まで、「俺は世界の○○社」的な所属のステータスに酔っているおじさんを多数みてきましたが、こうした大企業の正社員や公務員だけ「結果の平等」が実現できる幸せな時代は、終わりつつあります。

将来は、良い大学を出て大企業や役所に入っても安泰ではなく、40歳時点には、社会的地位、報酬面で大きな差がつく時代になるでしょう。

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③選択肢の多い時代

 現在、多くの建設コンサルタント会社で、在宅勤務、リモートワークが本格普及するに至りました。

通勤ラッシュ、お付き合い残業、社内の人間関係等の苦悩も軽減されてきています。

将来はさらに、成果に連動した報酬体系に変化し、仕事の自由度は増加していくでしょう。

 勤務地の地理的な制約や、所定内労働時間等もなくなります。

 結果として、自由時間が増え、好きなところに住んで、好きな時に仕事ができる時代が来るのかもしれません。その一方、仕事がない状態であれば、最低限の給与しか得られない状況になります。

 さらに、副業解禁もされ、いくつかの職業、収入源を持つことが普通になります。

 生きていくために、個人の才覚が重視される時代になります。

④インフラ分野への将来性

 今後、リモートワークの普及により、ビジネス・仕事上で居住地域に、地理的な制約がなくなっていきます。同様に、教育や医療分野においても地理的な制約条件が減少していくでしょう。

 仕事や教育、医療といった制約条件に縛られずに、本当に好きなところに住めるようになります。

 人々は、自身の住居(兼仕事場でもある)の快適性に対して、より多くの投資をするようになります。

 また居住地を選ぶ上で、複数の職業を持つ時代は、その地域のコミュニティ(交遊関係など)と、居住地域の魅力、文化や美観や住・自然環境、快適性(QOLの最大化)に対してこだわることになります。

 本当の地域間競争、「地域の魅力」の競争になります。

 ※地域間の浮き沈み、明暗が大きな時代になるでしょう。

 これまでのインフラ分野は、みなさんの支払った税を使う観点から、経済・防災インフラとしての機能とコストが強く意識されてきました。

 今後、「地域間の魅力」の競争になると、機能とコストだけでなく、副次的な機能(間接機能)であった、空間、景観、環境などが強く意識されるようになるでしょう。

 つまり、これからのインフラ分野は、ストックの維持と更新だけでなく、インフラ価値の再構築的にやるべきことがたくさんあります。 

 当然ですが、こうした国土の再構築は、強い「投資余力の制約下」で行われることになります。

 そのため、本当に知恵と創造性を絞り出してインフラ事業を行う時代になります。

 例えば、本当の魅力ある地域環境を作るには、まずは、マーケティングやマネジメントが最重要になり、さらに、都市計画・道路・河川、上下水道、エネルギーなどの各専門技術の融合させた社会空間を創造する必要があります。

 現状の建設コンサルタントに、こうした時代の要請に応える能力あるでしょうか?

 ※始まりつつあるスマートシティ的なものから取り残されている気がするのですが

 まず、最初にやるべきことととして、建設コンサルタント社内に「建設技術とマネジメント両方に精通した専門家を多く揃える」ここからスタートすべきです。

 ※参考コラム:「建設コンサルタントを人気職種にする方法

建設コンサルタントが中小企業診断士を取得したらどうなるか

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2.これからの建設コンサルタントの人生設計のあり方

 これからの働き方は、自由時間も選択肢も大きい上に、活動期間が30年以上も伸びる時代であり、「機会の平等」的にチャンスに溢れる時代ですが、一方で、生き方によって、その結果の個人差も大きくなります。

つまり、浮き沈み、明暗が大きくなっていきます。

 ※と書くと、「弱者切り捨て」などと騒ぎたくもなりますが、今後は、社会のセーフティネットが強化されていくはずで、個人的には、あまり心配していません。

 ※参考コラム:なぜ挑戦できないのか「ベーシックインカムは実現してしまう件

 

 これまでの成功モデル、30代前半で一人前になって40代くらいで管理職になって、指導的立場になり定年間際に、あわよくば取締役といった感じの生き方は、成立しなくなって来るでしょう。

 将来、選択肢が多く自由にやれる時代になることは明白です。

戦略的には、競合の少ない内に、時代に先乗りした方が成功率は高いですし、何より、その機会を生かさないのはもったいない気がします。

 

 建設コンサルタントの技術者は、なるべく早く(理想30代前半)には、特定分野を極め、技術士も取得し、どこでも食えるようになっていることを目指しましょう。

 もう、その段階で「人生の保険」は持てます。あとは自由です。

そこで、高学歴、大手企業、技術士のステータスに酔ったり慢心してはいけません。

 まだ、人生始まったばかりです。

 

その後の10年単位くらいで、様々な挑戦を繰り返していくような人生が面白いと思います。

 参考コラム:「建設コンサルタントが早期リタイアしてのんびり暮らす方法

      「就職先に建設コンサルタントを選んだ理由とその後

 

 先に述べたインフラ分野の新たな要請は、多様で創造性が要求されます。

 建設コンサル分野は、本当に面白い仕事が、これからたくさん生まれてきます。

 

 創造性に溢れる終身雇用のサラリーマンって、言葉的におかしくないですか?

 クリエイター、建築家、作家、コンサルタントなど創造的な仕事であれば、有名な人ほど、独立性が高いです。

 

 まずは、自分自身が創造的で独立性の高い生き方をしましょう。

 組織に縛られず、何か新しくて面白いことに挑戦したり、思いっきり働いて稼いだり、時には失敗したり、疲れたら数年単位でのんびりしたり、勉強したり、そうやって生きていく方が、充実した人生が送れるのではないでしょうか?

 人生二毛作どころか4毛作くらいまで十分できます。

 

 そして、新たな挑戦等で悩んだ際には、私に是非、相談してください。

 決して無理に転職は勧めませんから(笑)

 皆さんの挑戦を応援しています。

このコラムをシェアしていただけると嬉しいです。

 

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