建設コンサルタントで年収1000万超えの求人が増えている件

最近、当社に、年収1000万以上の建設コンサルタント求人が増えてきています。

 中には、採用時で年収1200万も可とする企業もあります。

 今までは、平均年収1000万を超えている企業でも、採用時は年収800万円スタートの求人が多かったのですが、最近は、採用時1000万の求人が増えてきており、時代の変化を感じています。

転職で年収1000万、という夢のある時代になってきました。

建設コンサルタント企業で年収1000万超えの求人が増えてきた背景について考察します。

建設コンサルタント技術者の経済的価値の指標

人材の経済的価値を判断する上で重要指標は、その人が出した「付加価値」です。

 付加価値とは、簡単に言えば、「生み出した価値」または「会社に落とした金額」になります。

 具体的には、建設コンサルタント業務で、一人が年間3000万円の売上げた場合、顧客に成果品(報告書、図面)を納めて、3000万を頂いたことになります。

 成果品の「紙と電子媒体」の原価は、せいぜい数万円であり、顧客は、その情報(データ)の価値に3000万を払っています。

 実際の業務は、協力会社等への外注費900万位(30%)、その他業務経費(成果品、交通費など)100万位が掛かります。

 付加価値額:売上3000万 - 外注費900万 - 直接経費100万=2000万円 

 つまり、売上3000万の内、その人が生み出した付加価値は「2000万円」です。

 これくらいが、中堅以上の建設コンサルタントの平均的な値です。

 ※技術者が知的労働で毎年2000万の付加価値を生み出すのですから、その大変さはご理解いただけると思います。

建設コンサルタント技術者の経済価値の実態について

建設コンサルタント技術者の経済的価値指標である「付加価値」の平均値は2000万位ですが、それは平均値であって、実態は個人差が大きくあります。

 俗に「パレート法則」呼ばれ、「会社の8割利益を2割の人材が稼ぐ」と言われていますが、建設コンサルタントは正に「この法則」がピッタリ当てはまる業界です。

「売上1500万、付加価値1000万」の人もいれば、「売上8000万、付加価値6000万円」出す人もいると言った感じです。

 このような個人差が生じる要因として、「専門分野」、「業務規模、顧客」、「実力」という三要素があります。

 個人差の半分以上の要因が「実力」であることは間違いないでしょう。

「付加価値」という概念は浸透していない

建設コンサルタント会社の業務管理レベルは、かなり幅があります。

 しかし、ほとんどの会社で自分や同僚がどれだけ「付加価値」を出しているかも知らないと思います。 せいぜい売上と粗利益くらいです。

 技術者の「付加価値」成績を明確に計測し、その情報を組織で共有することは、年功序列的組織の根底を覆すものであり多くの人は抵抗感があります。

 また、建設コンサルタントの技術者の多くは、付加価値額の個人差が数倍になるという事実を認められないと思います。

 高付加価値人材は「あいつは楽でおいしい仕事ばっかりやっている」と攻撃を受けてしまうでしょう。

 参考コラム: 「業務成績のいい人は楽でおいしい仕事ばっかりやっている説

 自分の人材価値を自己認識するのは、なかなか難しいことです。

年収1000万の求人が増える理由

採用側である企業経営者の視点から見てみましょう。

 技術者平均3000万売上、2000万の付加価値で、ようやく黒字になる企業があったとします。これほどの付加価値で、ようやく企業経営が黒字になる理由は、間接コストが多いためで、これらはほとんどが固定費です。(間接人員の人件費や家賃など)

 固定費は業績の良し悪しに関係なく毎年、必ず掛かってきます。

 売上が下がっても固定費は減らず、大きく赤字になります。

売上が増えても固定費は増えず、黒字は大きく増える状況にあります。

現状の市場の需給バランスは、需要過多の状況で、売上高は、組織の業務実施力に左右される状況にあります。

 もし、売上を増やすため受注し無理やり技術部に業務投入したら、技術部がパンクし離職者・休職者が増えてしまうでしょう。

 なんとか人材を確保するしかありません。

 また、人材投資効果の観点では、平均的付加価値2000万稼げる人材に、年収1000万(福利等含めて1200万)かかったとしても、、企業側は800万円の利益があります。

 つまり、採用時年収1000万であっても、人材投資的に十分に割に合います。

 だから、年収1000万であっても積極的に採用を考える企業が増えています。

年収1000万求人を出せる企業、出せない企業の差

前記のような、付加価値2000万出せる人材に年収1000万を提示することが、経営判断的に合理性があったとしても、年収1000万求人を出せない企業があります。

 それは、現役世代のベテラン技術者の年収が1000万に到達していない企業です。

 年功序列の企業では、中途採用人材が、同年代の古株の技術者より年収が高くなることは、組織文化的に受け入れられないでしょう。

 現状では、年収1000万求人を出せる企業は、「本当の実力主義の会社」か「40、50代の平均年収が1000万を超える会社」に限られているのが実態です。

将来はどうなるか

個人的には、一人2000万の高付加価値産業にしては、建設コンサルタント企業の最終利益が少なすぎると思います。

 利益が少ないことを主因として建設コンサルタントの研究開発的投資活動は、大手ゼネコン等に比して貧弱な限りです。

新たな価値創造活動がほぼ皆無であることが、建設コンサルタントの社会的地位が低いことにも繋がっています。

 利益の少ない原因は、無駄に豪勢な事務所や間接人員の人件費等の固定費が大きすぎることです。

 建設コンサルタントとして顧客へ価値を与えることと関係ない部分の比率が大きすぎます。

多くの企業で付加価値の内、稼いだ技術者本人への分配率は50%にも満たないでしょう。

 根本原因は、年功序列、終身雇用体制にあるでしょう。外の世界を知らない人材だけで経営幹部が構成され、会社名や役職のステータスだけが拠り所の人材ばかりになります。

根拠のない自己評価と、見栄のために豪勢な事務所等を欲するようになります。

しかし、こうした顧客に価値を与えることと関係ない部分が、肥大化していっても、顧客は100%公共分野であり、様々な理由で外資や新規参入からも守られているため、競争原理が働かず社会の健全な淘汰がなかなか進みません。

 建設コンサルタントというのは、本来、間接人員は、必要最低限なものでよいのです。

また、リモートワークの時代、豪勢な事務所も必要ありません。

 そして、成果に対して報酬を支払うのであれば、技術者への分配率は70%以上も可能なはずです。

 それが、「建設コンサルタントの将来の姿」となっていくことは間違いないです。

 年収1000万求人の急増は、こうした「大きな時代変化の兆候」と考えています。

 将来、成果給で、エース級の技術者が年収2000万と3000万を達成できる企業も増えてくるはずです。

 エース級の技術者が、自分の力で、いろいろ挑戦して自分の人生を切り拓ける世の中になるでしょう。

 ※年収2000万も稼げたら、10年くらい頑張れば早期リタイアもできますね。

 参考コラム:「建設コンサルタントが早期リタイアしてのんびり暮らす方法(FIRE)

 おわりに

 建設コンサルタントの中には、「これほど利益貢献しているのに、これしか貰えないのか」と考えている人も「大して仕事しないでこんなに貰ってよいのだろうか」と考えている人もいると思います。

 まずは、自分の役職やら資格は抜きにして、過去数年の「自分の付加価値」を認識してみてください。

 明らかに付加価値が少ない人(あるいは計測不能な人)は、せっかくなので年功序列が継続する限り、現組織にしがみつき、逃げ切りを狙うのもありです。

 

 年間2千万円の付加価値が出せる人なら年収1,000万円の可能性があります。 

※年収1000万を達成するためにはエースクラスの実力である必要はありません。

 

 まあ、お金に限らず、「やりたいことに挑戦した人生」、「自分で選択した人生」を歩むことが後悔の少ない人生を歩むコツです。

 将来「おだてられて、いいように使われていた」と気付いて、後悔だらけってオチは避けたいものです。

ご参考になれば幸いです。

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