社内での不当な低評価に悩んでいる人へ(自己評価の科学)
仕事で結果を出しているのに、会社や上司から評価されない、昇進が遅い、同僚から尊敬が感じられないなど、会社、上司、同僚等からの不当な低評価に悔しい思いをしている人は多いと思います。
そういう私自身も、建設コンサルタントのサラリーマン時代は、毎年、大きく難しい業務をこなして利益も出しているのに、大して評価されないことに馬鹿らしさを感じていた一人です。
そうした人のために、どう考えたらよいのか参考になる考え方を述べます。
1.誰もが自己評価は高いことを認識すべき
あなたは、自分自身の能力について、どのような自己評価を持っていますか?
と、もし聞かれれば、謙遜が美徳ですので、表向きは「大したことありません」とか「普通です」と答えると思います。
でも、内心は「俺は、そこそこ優秀」とほとんどの人が考えていませんか?
少なくとも「俺は無能」と本心で考えている人は、いないと思います。
どうしてそうなるかというと、共通した「優秀の定義」が存在せず、各自が都合よく「優秀を定義」して、自分と他人を評価しているからです。
一般社会での事例を示すと、エリートは、所属組織や役職、学歴や資格で自分の優秀さを定義し周囲に優越感を感じます。
非エリートは、エリートを「がり勉」とか「出世欲の塊」などと決めつけ、人間的優越を感じたり、自身の境遇を社会のせいにしたりします。
金持ちは収入が多いことで自身の優越性を感じ、低所得者は富裕者を「悪いことをして金儲けしている」と決めつけ、精神的優位性を感じます。
※社会的分断は、こうした都合のよい決めつけから生じています。
組織内で言えば、どんなに仕事のできない人でも「俺は無能」とは、これっぽっちも思ってません。「自分は、割に合わない仕事ばかり押し付けられている」と会社に不満を持っています。中には「俺は本気を出していないから」なんてのもあります。
そうした人に、大きな仕事を任せようとすると今度は「俺には無理」と無能アピールをして逃げ回ります。
※参考コラム:「難しい業務から逃げてしまう人だらけの会社にいました。」
実際に、表向き謙遜が激しい人でも、本心で自己評価が低い人は見たことありません。
人生に挫折した人も、その原因は外部(運や環境)に求めています。
つまり、人間は誰でも自己評価は高い ということは覚えておきましょう。
これは自己防衛のために絶対的に必要であり、これが健全です。
強い自己肯定感があることが、生きていける最低条件だと思います。
2.なぜ同僚や会社に低評価を受けていると感じるのか
誰もが自分に都合よく「優秀を定義」し自己評価するから「人間は誰でも自己評価が高い」ということは、自分にとって価値があることでも、他人にとって価値はないのです。
だから、必ず「自己評価」≧「同僚・上司の評価」になり、低評価されていると感じてしまいます。
もう一つの、不当な低評価が起こる原因ですが、人間は、自分より能力が高い人の存在を受け入れられないし、理解もできないことにあります。
そのため教養がなく視野の狭い人ほど、世界が狭く自己評価は高くなります。
つまり「頭の悪い人ほど自己評価が高い」ということです。
社内に、井の中の蛙、根拠のない万能感に溢れた、痛い中高年の方々はいませんか?
そういう人は、「自分より優秀な部下、若手」を理解できませんし、そういう部下の粗を探して、自分より劣ると無理やり決めつけます。
これは「ダンニング・クルーガー効果」といって、いろんな社会実験で確認されています。
だから、ほとんどの人は社内で「自分は不当に低評価されている」と感じており、不当な評価の結果として、処遇面、役職・ポジションへの不満という形で表れてくるケースが多いと思います。
3.組織内で受ける不当な低評価への対応方法はあるか
不当な低評価、その結果としての処遇・ポジションに対する不満がある人への、上司等からの、ありがちな助言は「頑張って仕事をして成果を出せば、いつか誰かが認めてくれる」というものです。
こういう言葉は、あまり信じない方がよいでしょう。
現に、大企業の幹部に出世した人であっても、能力も業績も大したことがない人が、たくさんいます。多くが同期の同僚達と比べて特別に優秀だったわけではありません。
逆に優秀で成果を出しても出世できなかった人が、その何倍も存在しているはずです。
日本企業での出世で重要な要素は、実力30%、運と社内政治が70%くらいです。
ところが、どの会社の幹部も、こってこての年功序列なのに「よそはどうか知らないが、うちは完全実力主義、成果主義だ」などと、のたまいます。
これっぽっちも、自分が出世したのは、会社で仲良しクラブに入り、先輩に気に入られたからなんて認識はありません。
そういう人は、本当の実力主義の世界も知らないし、リスクを取って挑戦したこともないわけで、自社が「実力主義」だと信じ込んでも仕方がないと思います。
先ほどの「ダンニング・クルーガー効果」ですね。
だから「頑張って仕事をして成果を出せば、いつか誰かが認めてくれる」なんて言葉は、そのまま信じちゃだめです。
不当な低評価に、本気で対応しようと思ったら、重要な要素が、実力30%、運・社内政治70%であることを認識して、対応する必要があります。
具体的な対応方法を述べます。
4.不当な評価への対応方法(具体編)
その1:諦めて受け入れる
不当な低評価に苦しんでいる人に、「諦めろ」と助言するのは、気が引けますが、世の中ある程度は、諦めが肝心です。
高評価を獲得するためには、社内政治力などの実力以外の要素が大半を占めているのであれば、対処しても上手くいく可能性は少ないです。
組織の外に飛び出す覚悟がない人間は、まず、不当な低評価を大体の人が感じている事実と、そのメカニズムを認識し「それが普通」と自分に言い聞かせましょう。
そして、プライベートの部分、健康や能力開発、趣味(遊び)、友人・家族との関係などを充実させて、会社外での幸福を追求しましょう。
出世したかどうかなんて、その社内だけの価値で、外から見たら、どうでもよいことなのです。
そのため、外の世界との交流を拡大することで、社内での低評価の不満は、希薄になっていくはずです。
まずは「受け入れる」というのことが、余計なことから解放されるために重要です。
その2:社内政治への対応方法
社内政治への対応力は、先天的な才能と生育環境等で決まってしまいます。チンパンジーレベルの原始時代から本能的に組み込まれた意思決定なのです。
学生時代、校内の公式組織(教師からの評価、生徒会、部活)と、非公式組織(友人、先輩後輩関係などの)で上手くやれるような人、人気者だった人は才能があります。
対処方法は「組織力学」という学問がありますが、元々、向かない人が付け焼刃で対処したところで、どうにかなる可能性は低いものの、最低限の部分は情報として知っておくべきであり、その方法論を述べます。
①敵を作らない・恨まれない
エース級で仕事はできるのに出世できなかった人の特徴として、社内に敵が多いことが挙げられます。
なぜかと言えば、誰かの恨みをかっている人は、調子の良いときは周りがチヤホヤしてくれますが、長い人生の中で、一度は、大きな失敗や不運に見舞われます。
そのような弱った時に、誰か一人が牙を向いた瞬間に、周りも豹変してバッシングに加担してくるからです。そこで大体が、辞めるか、小さく萎んでしまいます。
※芸能人のスキャンダル発覚時のバッシングでよくありますね。
恨まれないためには部下・同僚への嫌がらせや、いじめをしないというのは当たり前のことです。
マウンティングという言葉が一般的であることからも、誰もが自己評価は高く、屈辱や劣等感を感じた時には、どのような理由であれ相手を恨みます。
そのため、優秀な人は、存在しているだけで周りの人に屈辱を与えていることは認識すべきでしょう。そのため、相手のプライドを傷つけないように、自慢しない、競争心を表に出さない、下手に出て、どこか抜けていて隙がある感じの人間に見せていくべきです。癒し系に徹しましょう。
②舐められない
恨まれないために組織内で過度に謙遜して下手に出ていると、今度は舐められてしまいます。
そうなると、旨味の無い役回りやポジションに、はめ込めこまれてしまいます。
そのため、「恨まれず」かつ「舐められない」という相反した要素を両立させる必要があります。
舐められないためには、「尊敬・強さ」と「怖さ」がないといけません。
つまり「あなたが強く・有能」であり「売られた喧嘩は買いますよ」「やるときは徹底的にやりますよ」という気概もあると周囲に思わせることが必要ですし、時には戦うことも必要です。
相手側に「敵に回したら厄介、味方にしたら頼もしい」と思わせれば、舐められることはありません。
③徒党を組む
組織内の一匹狼というのは、絶対的に不利です。必要な情報が入ってきませんし、困った時に助けたり庇ってくれる人がおらず、その上、標的にもなりやすいです。
逆に、派閥、徒党を組むといった社内の非公式組織の力は絶大です。
例えば、社内の女性アルバイトが「仲良しグループ」を作っていたとします。そこに、一緒に飲みに行きたい男性社員グループが近づきます。中にはそれなりに地位のあるエロおやじもいます。
女性グループが特定の社員を嫌うとします。すると、男性グループは歓心を得たいがために「俺が何とかしてやるよ」的に、その社員へのバッシングに加担する人も出てきます。
こうなると、社内で「アルバイトグループに嫌われるとやばいぞ」と認識され、非公式組織としてかなりの影響力・パワーを持ちます。
※女性が群れる理由が、原始社会において、他のオスからの集団防衛のために、メスの機嫌を取りたいオスを用心棒にすることが起源らしいです。今も昔も人間は変わりません。
アルバイトのような不安定で弱い立場の人でも、徒党を組むだけで、非公式組織的に、かなりのパワーを持つのであれば、社内の数%の有力者同士が徒党を組んだだけでも、組織を牛耳ることも可能になります。
社内の政治力を強くするためには、徒党を組みましょう。
その3:実力を認めさせる
社内に、実力を認めさせる方法としては、まずは、定量的な「数値で分かる成果」を出すことが挙げられます。簡単に言えば、売上や利益、付加価値等の定量的な会社への貢献度になります。
しかし、付加価値等の定量的に大きな成果を出し続けても、思ったほどは評価は上がりません。
なぜなら、ほとんどの会社で、各社員の定量的な貢献度は非公表ですし、公表されていても、その数値の意味を理解している人も少ないです。
数値的結果を出している人への評価は、「楽でおいしい仕事ばかりやっているから」と思っています。
参考コラム:「業務成績の良い人は楽でおいしい仕事ばかりやっている説」
多くの社員にとっては、会社への貢献度は「遅くまで会社に残ったこと」であったり、「上司への従順さ」であったりします。
あなたの会社の人事評価項目を見てください。勤務態度、責任感、習熟度、協調性、リーダシップみたいな感じで、ほぼ評価者の主観で構成されているでしょう。
だから、実力を認めさせる第一歩は、あなたの会社・上司にとっての「優秀な社員とはなにか」を観察し、見つけることです。
あなたの会社が、「遅くまで会社に残った人が偉い」という価値観なのであれば、数値で結果を出すよりも、仕事をしているふりをしながら、毎日深夜まで会社に残る方が効果的です。
おわりに
日本企業の人材の「組織内での評価」は、先輩が後輩を評価する構造上、入社後の早い内に組織内で「この人はこういう人だ」というレッテル、固定概念が定着してしまいます。
一度定着した固定概念を逆転させるのは、非常に困難が伴うことは肝に銘じてください。
でもそうした不満を持つ人は、そもそもが、自分の意思で、安定を優先して、その環境を選択したのだから、ある程度の「理不尽・不公平」や「つまらなさ」は受け入れるしかありません。
そんな状況でも、私の助言通りに、社内で癒し系に徹して、仲の良い同僚を作り、常に会社への忠誠心や、仕事忙しい感をアピールし、後は割り切ってプライベートを充実させていけば、それなりに満足できる人生にはなるはずです。
参考コラム:「燃え尽きてしまったサラリーマンは今後どう生きるか」
それでも満足できない人は、環境を変えて挑戦するしかありません。
私も、半ば無理やり、外の世界にはじき出されてしまった口ですが、後で「なんでもっと早く辞めなかったのか」と思ったものです。
私の大先輩でも50代から外の世界に飛び出す羽目になった人がいます。
参考コラム:「独立するする詐欺も悪くない(ある先輩の物語)」
ご参考になれば幸いです。
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