日本の潜在労働力はどの位あるのか?【人材が無駄になり過ぎ】

日本の労働力不足は、深刻です。

 推計データでは、2030年に644万人の労働力が不足するそうです。

 ※ちなみに、2020年時点で384万人の労働力が不足

 出典:パーソル総合研究所推計データ

 そのため、外国人労働者の受け入れの案や、技能実習生の社会問題もあります。

 でも、日本は潜在的な労働力は、体感的に相当なボリュームがあると思います。

 なぜなら、高等教育を受けた人材、スキルも経験もある人間が、無駄になっている事例をたくさん知っているからです。

 そこで日本に潜在的な労働力はどの位あるのか、その原因や「労働力を増やす秘策」についても考察してみます。

1.現状の日本の労働力

現状の日本の就業者数:6659万人です。その内訳は以下の通りになります。

正規雇用者:3544万人

非正規雇用者:2097万人 (内訳 パート1014万、アルバイト467万、派遣151万、契約社員271万、嘱託107万、その他82万)

自営業者・家族従事者:639万人(フリーランスも含まれる)

役員:343万人

出典:令和3年総務省統計(12月)

ちなみに就業者の定義ですが、調査期間(1週間)に、1時間でも働いた人は、すべて就業者数に含まれています。

2.日本の現状の実質労働力(フルタイム換算)は?

日本の就業者数は6659万人ですが、週1時間の労働も就業者に含まれる点を考慮すると、実質の労働力ボリュームを定量的に判断するには、フルタイムの人数に換算する必要があります。

  そこで、仮説的にフルタイム換算の実質労働力を推定してみると 

 日本の実質労働力:4834万人程度と想定できます。

 つまり4834万人の労働力で、総人口1億2600万人(公的年金受給者4077万人等)を支えているのが現状の日本です。

※以下の仮説で補正して推定

実態の日本の労働力(フルタイム換算)

 総就業者数6660万人-フルタイム換算補正1,326万人-社内失業者500万人=4,834万人

①労働力フルタイム時間換算の仮定

パート・アルバイト、自営業者(家族従事者含む)、役員、嘱託、その他の実質労働量は、フルタイムの半分と推定

 ※自営業者は、高齢者が家業を細々やっている人も多く、さらに家族従事者(無給の従事者)は、お手伝い程度の人も多い、フリーランスの36%は月100時間未満(フリーランス白書2019)。

※役員も、企業の99%以上が中小企業で経営と所有が一体化しており役員は、ほとんど見ない謎の人、親族等も多く存在しています。

自営業者・家族従事者639万人+役員343万人+パート1014万人+アルバイト467万人+嘱託107万+その他82万=2,652万人

 以上を合計2,652万人 フルタイム換算で2652万人/2=1326万人

②社内失業者

2,011年の内閣府調査では、既に465万人の社内失業者の存在していることから、現在では500万人が、存在していると仮定します。

※参考コラム:「働かないおじさん500万人の衝撃【if終身雇用廃止】

3.日本の潜在労働力推計

結論を先に述べると、日本の潜在的労働力は、最大限の見積もりで2900万人程度はあると推定できます。

つまり、日本国内には、将来想定される労働力不足量(644万人)の数倍の潜在的労働力候補が存在しています。

潜在的な労働力候補の推計値

  • 社内失業者等:500万人
  • 専業主婦  :680万人(統計局2020データ)
  • パート等(2652万人)がフルタイムになった場合の労働力増分:1326万人
  • 無業者(引きこもり等):100万人(詳細データなし)
  • シニアの就業増:300万人(65~74歳人口1743万人、65歳以上の就業者892万人)

上記の合計:2,906万人

4.現状の働けない理由は

現状は潜在労働力が、2900万人以上が存在していると推定できますが、これらの人々の働けない理由は以下のものが推定されます。

  • 経済的に必要ないから(富裕層)
  • 時間的余裕がない(子育て、介護、家事等の制約)
  • 就労時間、勤務地の融通が利かない(急遽休めない、転勤がある)
  • 健康・体力の状況(通勤や職務上の)
  • やりがいがない仕事(社会貢献、顧客の感謝、自己表現)
  • 同僚や社会からのリスペクト(尊重)がない
  • 働くと損が生じる社会制度の存在(配偶者控除や社会保険、生活保護など)

現状の日本で、遊んで暮らせる経済的な余裕も持つ人は、ごく少数派であり、さらに経済的に働く必要のない人でも、プロのスポーツ選手や芸術家、社会活動家を見れば分かる通り、自己表現や社会貢献も働く理由になります。

 本来は、誰でも何らかの働く理由は持っています

 つまり、潜在的な労働力2900万人の多くは、働きたくても働けない状況にあることが考察されます。

 こうした働けない理由を生じる大きな原因は、「メンバーシップ型雇用」と「それを支える社会制度」だと考えてみます。

 以下に考察していきます。

5.なぜメンバーシップ型雇用が労働人口を減らすのか

日本の労働人口が潜在化する最大の原因は、日本的メンバーシップ型雇用に起因していると考えています。

 メンバーシップ型雇用は、新卒入社、年功序列、終身雇用で象徴される組織です。

 「入社 = 結婚」、「会社 = 家族」 に例えられたりします。

 昭和の体育会の理不尽さと同様、先輩が気に入った後輩に代々、権力を譲り渡してきた組織では、次々に無駄な役職と仕事、儀式や謎ルールが生まれ、理不尽や非寛容さに溢れていきます。

 そうした無駄を誰かが指摘したら「組織の和」を乱したとして、社内で孤立し、いじめられますので、誰も言えません。自浄能力はゼロです。

 そして、無駄だらけの経営により、企業経営は、じり貧になっていきます。

 そこで、ほとんどの企業は、「正社員、非正規」、「親会社・子会社、下請け」などのカースト的な身分の壁と、搾取構造を作り、正社員の利益を守ることだけ考えて、なんとか存続する道を選びます。

 やってもやらなくても結果が変わらなければ、有能な人材も、やる気を失ってしまうでしょう。 

 日本のサラリーマンの組織へ貢献意欲を持つ人は数%、逆に会社を憎む人は1/3と世界最低レベル、平均学習時間は、一日数分です。

 また、外の世界に飛び出しても、どこも似たような組織で、中途は受け入れられなければ、どれほど嫌でも、現職にしがみつくしかありません。

 結果として、一説には国内500万もの「社内失業者」、「働かないおじさん」と呼ばれる人達を生み出しています。

 ※参考コラム:「働かないおじさん500万人の衝撃【if終身雇用廃止】

 これが30年以上ゼロ成長の理由であり、多くの日本企業の現状と言えるでしょう。

 ただ、「社内失業者」も正社員であるだけましです。

 社内には、正社員と非正規社員という二種類の社員がいます。

 非正規という言葉の響きからも分かるように、会社のメンバーとしては認めて貰えません。社内カーストの中で正社員の下に置かれた存在です。

 正社員がやりたくない仕事を、低賃金、低リスペクトで働くケースが多く、組織内での呼ばれ方も「派遣さん」「パートさん」「バイト君」などと呼ばれることはざらで、場合によっては「おい、そこのバイト」「派遣の分際で」などと言われることもあるでしょう。

 非正規雇用は、主婦層、就職氷河期世代、60代以上のシニア層が多くを占めますが

 これらの層が、非正規雇用になる理由は、正規雇用の中途採用が狭き門であることや、メンバーシップ型組織特有の無駄な拘束時間の長さや転勤等の制約が多く、個人の事情(家庭等)と両立できないできない点が大きいでしょう。

 非正規雇用に中には、高度な教育を受け、実務経験も積んだ人材も多数含まれています。

 しかし、非正規で働いた場合、「低賃金」、「低リスペクト」、「やりがいなし」の状況になり、高度な教育を受けた人には我慢できないでしょう。

 つまり「働けない理由」が満載になります。

 そこで、労働=苦悩と考えて、短時間労働で最小限だけ働く選択をするようになります。

 さらに、専業主婦、大人の引きこもり、年金受給者などにおいては、「低賃金」、「低リスペクト」、「やりがいなし」の仕事しかないから「働くのをやめた人」もかなり存在しているはずです。

 以上のように、メンバーシップ型雇用が、組織内に、燃え尽きた膨大な社内失業者を生むと同時に、正規・非正規の身分階層を生じ、非正規層の労働意欲を減少させると共に、膨大な労働放棄層を生じていると考えています。

6.挑戦するほど損する社会制度とセーフティネットの不備

子供向けアニメの設定のほとんどが、一戸建てに住んで、サラリーマンのお父さんと、専業主婦のお母さんという家庭であることから分かるように、一億総中層、「結果の平等主義」の日本人にとっての、理想形として定着しているようです。

 日本の社会保障は、企業にすべて押し付けるやり方です。

 企業側は、一度雇った社員をクビにも出来ず、昇進昇給をして一生面倒を見なければならない仕組みになっています。

 そして、お父さんが、家族のために夢を諦め、ひたすら我慢して、会社を辞めなければ家庭が成り立つように出来ているのです。

 社会保障を「企業」と「お父さんの我慢」に押し付けるやり方は、本来、社会保障を行う立場の行政側からしたら、とても楽で都合がよい話です。

 そのため社会制度が、そういう家庭が得になるようになっており、逆に、そこを逸脱すると損をするように出来ています。

 具体的には

 日本は、退職金が税制的に優遇されていますが、もし40代のサラリーマンが中途退職したら、会社規定で退職金が50%減額されるケースも少なくありません。

 会社に迷惑料を数百万も払って辞めるようなものです。

 社会保険制度、公的年金制度を見ても、サラリーマンと無職やフリーランスでは違います。会社を辞めると、まず、変更手続きに手間を取られます。

 独立等をするとサラリーマンが如何に守られていたのか気づくでしょう。

 失業手当も自主退職の場合は、支給は3か月後で支給期間は数か月です。

 最後のセーフティネットの生活保護も、行政は如何に支給しないかブロックしてきますし、支給されるかは行政担当者の恣意性が入る余地がかなりあります。

 実際、都心の河川敷に行けば、セーフティネットから漏れ、段ボールで作った家で暮らしている人々が多数見られます。

 一方、生活保護を受給できれば、生活できて医療も無料になります。

 しかし、働き出せば、これらの権利は喪失してしまうので、働いたら損してしまいます。

 このように、日本社会は、中途入社は狭き門で、やり直しが利かない上に、挑戦するほど社会制度的に損して、セーフティネットも不備となれば、高度な教育を受けた最優秀層の人材は、有名大学卒の新卒キップを使って、大きな安定した組織に所属し、一生をそこで過ごすことを選択するでしょう。

 結果として、膨大な社内失業者を組織に抱えて、企業は将来への価値投資ができません。

 次に配偶者・扶養者が、扶養の範囲を超えて稼ぐと、世帯で、年間数十万単位で税や社会保険負担増になってしまいます。

 例えば130万→200万に70万の所得増でも、世帯収入(手取り額)が20万位しか増えなかったら、誰でも馬鹿らしくて働けないでしょう。

 ※何十年後の年金受取額が増えると言われても信じるのは難しいですね

 だから、扶養の範囲のみで働くか、いっそ働かないという選択をするようになります。

 結果として、膨大なパート・アルバイト、専業主婦層を生じ、人材・労働力を潜在化してしています。

イメージ:今の日本の現状をサザエ家で例えると

サザエ家の20年後が、並平とフネは年金生活、マスオは社内失業者、サザエは専業主婦、カツオは引きこもり、ワカメは非正規、タラちゃんは公務員志望の大学生となった世界です。

 この後に及んで、まだ昔のサザエ家を理想として追い求め、労働力不足を補うため低賃金労働をしてくれる外国人労働者を導入しようとしている状況です。

 さらに、その20年後を想像すると、並平とフネは要介護、サザエとマスオは。。。

恐ろしいから、この辺でやめましょう。

7.仮に1400万人の労働人口が喚起されたら

もし日本社会が、社会のセーフティネットを強化した上で、メンバーシップ型雇用を卒業し、年齢・性別、雇用形態等での採用や賃金の差別がなくなり、転職や独立など挑戦するほど得する社会制度に変わることができれば、日本の労働人口は、膨大に増えていくと思います。

 先に挙げた潜在労働力2900万人の半分、1450万人の労働力が顕在化された場合、日本社会が、どうなるのか想像してみます。

 現状の実質労働力5000万人→6450万人と3割増、さらに挑戦するほど得する世界になった場合です。

①反対派の主張の予想

2030年の不足労働力予測は650万人ですので、1450万人の労働人口が喚起されると650万人労働力が増え、残り800万人(1450万-650万人)は、失業者ということになります。

 需給的には、労働力供給過多になり、賃金相場は下落し、最低賃金ラインで働く人が増えると思います。

 つまり、短期的には、失業者だらけで、最低賃金で働く労働者が増えるという結末です。

 さらに、雇用が流動化すれば労働者は解雇に怯えて経営者の言いなりになり、ブラック企業が蔓延るという主張すると思います。

 恐らく、反対派はこうした主張で、既存の社会制度の維持を主張すると思います。

 実際、短期的には貧富の差が大きくなるような「社会のひずみ」が、顕れる可能性は高いと思います。

 ※ただ650万人の労働力が増えた分、企業収益も税収も所得も増えるはずで景気全体としては良いと思います。

②失業者だらけになり貧富の差が増大するのか

セーフティネットを強化した上で、挑戦するほど得する社会になった場合、想定される労働需要の増大は、どの程度になるのか以下に考察します。

  • a.不足労働力(2030年予測):650万人(介護、農業、建設、製造業分野で深刻)
  • b.メンバーシップ型雇用卒業による雇用増:500万人(社内失業者減と同数)
  • c.起業・独立・フリーランスの増大による雇用増:c百万人
  • d.製造業の国内回帰:d百万人
  • e.セーフティネット強化対策の消費増大による雇用増:e百万人

労働力需要増は、上記a~e合計=1150万人+ α百万人(c+d+e合計) となります。

 労働力需要増(1150万+α百万) ⇔ 顕在化した労働力1450万人 を対比して、失業者があふれる可能性は低いと思います。

 さらに、1450万人の労働力増大により、企業収益も税収も個人所得も増大し、その分の消費増大による新たな労働需要増を考えると、人手不足になるのではないでしょうか?

 人材流動性が高まった上に、求人・労働需要過多ということは、人件費は高騰するはずで、最低賃金労働者は減少すると予測します。

③景気はよくなるのか

現状は実質労働力5000万人でGDP500兆円とすると、労働者の一人当たりの付加価値は1000万円程度と想定できます。

 1450万人労働力が増えれば、145兆円のGDP増となります。

 しかし、短期的には、未習熟な状態の労働者が多いと想定されるので、80兆円くらいのGDP増でしょう。

 それでも30年のゼロ成長から、一気に15%成長です。

 税収も35兆円くらいは増え、投資的活動や社会保障も充実するでしょう。

 長期的には、人材流動性が高く、挑戦するほど得する社会になれば、高付加価値産業に人材が移動し、研究開発、教育・自己投資的活動も増大します。

 結果、国際競争力が高まり、労働生産性も向上していくと思われます。

 現状の労働生産性が米国の6割程度で改善余地が大きく、さらに労働力が30%(1400万人)増大すれば、長期的にはGDPは約二倍、1000兆円も夢ではないでしょう。

 本当のユートピア的な社会になる可能性があります。

8.実現のためシナリオはあるのか

メンバーシップ型雇用が失われることは、「年功序列、終身雇用」の収入と雇用の安定特権と、正規・非正規の上位身分を失うことになります。

 富裕層ですら将来不安を抱えている中で、人材の流動性を上げる政策には、猛反発が起こることは確実で、現在でも政治的にアンタッチャブルな領域となっています。

 そのため、現時点での短期的な実現可能性は、とても低いと言わざるを得ません。

 それでも、実現可能性があるシナリオがあるとしたら以下のものです。

①まずはセーフティネット強化と国民配布の仕組み作り

現状のセーフティネットは、例えると、崖から転落し大けがを負ってから自力で這って申請に行って、助けて貰えるかは狭き門という状況です。

 人材流動化を行う前に、所得に関係なく、現役世代への決して切れないセーフティネットを整備し、社会不安を軽減しないと合意形成が難しいと思います。

 日本の総人口から年金受給者等を除く人口は約8000万人、子供手当受給者を除く現役世代人口は6500万人になります。

 この現役世代への切れないセーフティネットの具体例として、ベーシックインカムが挙げられます。

 6500万人の現役世代に毎月1万を配布するには年約8兆円必要です。

 まず8兆円で、毎月1万円のベーシックインカムを導入します。

 期間は3年で総額は3年×8兆円=24兆円です。

 毎年のように何十兆円単位で補正の景気対策を行っている現状を考えれば、その一部を回すだけでできます。

 受け取りは、マイナンバーと口座を紐づけしたものに限り、フィンテックにより国が国民に直接振り込みます。

 4人家族(夫婦、子供2人)で、子供手当を合わせて月4万円、年間48万円受け取れますので家計はかなり助かりますし、生活不安が少しだけ減少します。

 結果として、消費が活発化し、毎年3兆円くらいは税収増が見込めます。

 と同時に、社会全体でマイナンバーと口座の紐づけが進み、国民への直接配布の仕組みができます。※お金の流れの透明化が進みます。

 現在の表に出ない経済規模は60兆円、税収損失20兆弱という説もあります。

 お金の流れが透明化すると、富裕層の所得隠し等が難しくなり、税収が5兆増えるかもしれません。 

 消費活発化(3兆)と、お金の見える化(5兆)により8兆の税収増なら、年間8兆の予算で、月1万円のベーシックインカムは、恒常化できます。

※現在、ベーシックインカムを公約に掲げる政党が増えましたが、いきなり月7万支給、年間予算70兆円の政策意思決定の実現可能性はゼロです。

 単なる若年層への人気取りポーズに見えます。

 もし本気で実現するなら、まず月1万円の配布を主張すべきでしょう。

②退職金税制優遇と所得控除を廃止し、税収増分はベーシックインカムへの上乗せ

①の月1万ベーシックインカムを1年経てば、国民配布の仕組みも出来上がりますし、国民にその恩恵の理解が進むと思います。

 続いて、サラリーマンを会社に縛る退職金制度をやめる必要があります。

 退職金の優遇税制をやめる。自己都合退職時に支給額を大幅減額することを法的に禁じる等の政策が必要です。

 企業側は、退職金を人質にした中途退職抑止効果が期待できませんので、多くの会社では退職金制度を廃止し、社員に退職金引き当て分を、給与に上乗せして支払うようになるでしょう。

 次に、所得税の基礎控除、配偶者控除等を廃止し、その分の税収増分は10兆円くらいになると思います。(明瞭な金額データがない)

 税収増分を、年金受給者等を除く8000万人にベーシックインカムとして月1万円を支給します。

 これでベーシックインカムは月2万円になります。

 所得控除廃止は低所得層の増税になると怒る人が居ると思いますが、日本は累進課税のため、所得税収の80%は上位20%富裕層が支払ったものと言われています。

 もともと低税率の低所得層は控除額よりベーシックインカム受給額の方が多いはずです。

 富裕層は、ベーシックインカム受給額より控除廃止による増税分が多くなりますが、富裕層もローンを抱え失業等の生活不安を抱えていますので、セーフティネット強化は意義があります。

 さて、月2万のベーシックインカムで、4人家族(夫婦、子供2人)で月8万、年間96万の支給額になります。

 かなり生活不安が軽減し、子供の教育投資や自己投資も盛んになります。

 「もう一人、産もうか」という感じで出生率も増えます。

 さらに、退職金を人質にされて挑戦できなかったサラリーマンの、独立や転職が大幅に増えます。

 また、配偶者控除の廃止により、専業主婦(630万人)やパート・アルバイト(2000万人)の「損するから働けない理由」が軽減します。

 労働力が500万人位は、顕在化するのではないかと思います。

 その結果、労働力一人500万円の付加価値で、併せて25兆円くらいはGDPが増加し、税収は10兆円くらいは増えます。さらに社会保険収入も大幅増になると思います。

 ※税収増分をベーシックインカムに回せば、さらに月1万上乗せ可能です

 国内景気や雰囲気は、かなり盛り上がりを見せるでしょう。

③挑戦や働くと損する社会保険制度の解消

会社を辞め転職するたびに、社会保険の変更手続きに手間を取られますし、独立等は大幅な社会保険負担増になり、挑戦を阻害しています。

 また、扶養者が「たくさん働くと社会保険料が上がって損するから働けない」大きな原因です。

 ここは、大きな反発が予測されるますが、まず、前記②により、500万人の労働者が増えた分、税収が増加するので、その税収増分でベーシックインカムをさらに月1万円上乗せします。

 つまり、月3万円のベーシックインカムが可能になります。

 4人家族(夫婦、子供2人)で月12万、年間144万の支給額になります。

 もうこうなると、社会不安も軽減し、ベビーブームが起こるかもしれませんし、独立起業も増えるでしょう。地方移住も増え、過疎地も盛り上がるはずです。

 その社会状況で、以下のように変更を行います。

・社会保険料の会社半額負担をやめて、その分を給与に上乗せして支給する

  ※サラリーマンも実際は多額の社会保険を払っていたと気づくと思います。

・扶養者の制度を廃止し、国民(年金、健康保険)に統合

 もうこうなると、専業主婦680万人、パート主婦1040万人、その他の労働放棄層も働くほど得になるので、フルタイムやフリーランス等、多様な働き方で活躍する人も増えます。

 また、サラリーマンの独立や転職を縛る鎖の大部分は無くなっています。

 すると、また500万人くらいは労働人口が増えると思います。

 経済もさらに急成長し、税収も企業利益も国民所得も増えるでしょう。

 長期的には、社会保険(厚生、国民)をマイナンバーに統合し、税負担方式に変化していくと、雇用者、フリーランス、無職と形態が変わっても手続きすら必要もなく、国民として同一の社会保障サービスが受けられるようになれば、安心して、より挑戦しやすい社会になるでしょう。

④年功序列、終身雇用の卒業

前記の①~③が実行されれば、サラリーマンを会社に縛る鎖はほぼありませんし、働いたり挑戦するほど、得する社会になっています。

 さらに月3万のベーシックインカムがあれば、社会不安も軽減し、挑戦へのハードルが大幅に下がっているでしょう。

 数年が経てば、現状より労働者は1000万人増、フリーランスや起業人口も大幅増、ベビーブームが起こるかもしれませんし、地方移住も増え、過疎地も盛り上がるはずです。

 皆がそれぞれ好きなことに挑戦できる社会になります。

 一方、メンバーシップ型の伝統的な日本企業では、優秀な人ほど、転職や独立をしてしまいますし、人員採用(新卒・中途)しようにも、優秀な人ほど、年功序列を嫌って集まらなくなるでしょう。

 世論的には、年功序列、終身雇用の卒業派が、多数派になると思います。

 それでもメンバーシップ型組織は、自己改革できませんし、じり貧になっていくでしょう。

 例え少数派になっても、国と地方の総財政規模230兆円を財源とする巨大な既得権産業は、競争がなく安定しています。

 メンバーシップ型雇用でしか生きられない人達が、生存権をかけて団結し断固反対するので、現状の仕組みだったら絶対に変われません。

 ところが、その頃は、DX化が進み、マイナンバーに保険や年金や運転免許、銀行口座も統合されていますので、当然、マイナンバーでインターネット投票もできるようになっています。

 そうなると、政治家は当選するためには、少しづつ年功序列、終身雇用は卒業していく政策をとるようになるでしょう。

 そうなると、最後の既得権分野の効率化が進み、社内失業者等の組織内に埋もれた高学歴な労働力が400万にくらいは、顕在化していくと思います。

 すると、社内失業者を養う義務から解放された企業の利益が増大し税収増により、さらに月2万くらいのベーシックインカム増が可能で、合わせて、最大月5万までは実現性があります。

 さらに、企業は社員を一生面倒見なければならない「雇用リスク」が無くなるため、雇用に年齢や性別の壁がなくなり、能力だけみて積極的に中途採用できるようになります。

 正規、非正規の身分の壁が壊れ、ギグワーク、フリーランス等の多様な働き方も増えていくでしょう。

 ※参考コラム:「働かないおじさん500万人の衝撃【if終身雇用廃止】

 ①~③までで5年、④は10年くらいで実現可能性はあります。

 最終的には、GDP1000兆、ベーシックインカムがあるユートピアになれます。

9.まとめ(将来のイメージ)

◆現状の日本社会:働けない理由が多い

サザエ家の20年後が、並平とフネは年金生活、マスオは社内失業者、サザエは専業主婦、カツオは引きこもり、ワカメは非正規、タラちゃんは公務員志望の大学生となった世界です。

 この後に及んで、まだ昔のサザエ家を理想として追い求め、労働力不足を補うため低賃金労働をしてくれる外国人労働者を導入しようとしている状況です。

◆理想像:セーフティネット強化し、挑戦するほど得する社会になった場合

 サザエ家の20年後が、並平は中小企業のマネージャー、フネは年金生活(ボランティア活動)、マスオはフリーランス、サザエは介護職、カツオはプロゲーマー、ワカメはキャリアウーマン、タラちゃんは起業家志望の大学生となった世界です。

 そして、世界中から高度人材が自然に集まってくる状況です。

 ※さらにベーシックインカムもあるので安心して挑戦できます。

10.ベーシックインカムの規模について

 ベーシックインカムが月10万という規模の場合、年間予算は100兆円が必要になります。

 現状の国と地方の総財政規模230兆から100兆円もベーシックインカムに回したら、社会保障制度や教育、インフラ等の予算を大幅に削らなくてはなりません。

 すると老後や失業、高額医療費等の社会不安が増大し、挑戦できない社会になってしまいます。

 さらに、月10万なら4人で40万の収入です。労働放棄し退廃的な暮らしをする集団が急増し社会不安が大きくなると思います。

 ベーシックインカムは、挑戦するほど得する社会にすることが主目的で、労働放棄層を急増させない社会の健全さを維持できる範囲は、月3万~5万位が上限と予測します。

 また、月3万で年間30兆予算であれば労働力増と経済成長を加味すれば現実味があります。

 現状の社会保障(健康保険や年金等)を維持 + 低額(月3万程度)のベーシックインカム方式が、実現性も踏まえて理想的だと推定します。

※実際は、小額から初めて運用しながらが最適値を政策判断する必要あり

 

おわりに

 このコラムを書いたきっかけですが、これまで大学や院卒の女性が、企業で何年も実務経験を積んで、その後、結婚や出産や夫の転勤等を理由に、退職してしまう人を多く見て来ました。

 また、男女を問わず、激務や人間関係などでボロボロになって、会社を辞める人も多く、その後の人生も社会から孤立してしまう人います。

 これはメンバーシップ型組織の無駄な拘束の長さや、非寛容さによる会社への不適合、やり直しが利かない社会が原因となっている点は明白であり、結果として、膨大な潜在労働力が存在し、人材が無駄になっている上に、幸福にしていないと感じていました。

 そこで、潜在労働力が概算でどの位があるのか、その原因、解決する方法論について考察してみることにしたのがきっかけです。

 結果としては前記の通りですが、これほど潜在労働力があるのだから、社会のセーフティネットを強化して社会不安を軽減した上で、挑戦するほど得する社会にすれば、いくらでも労働力が増えるし、埋もれた才能も発揮されて、みんな自由で豊かに暮らせるようになるのに「なんて勿体ないんだ~」と思っています。

 今回は、「勿体ない精神」の発露から、このようなコラムを書かせていただきました。 

 ご参考になれば、幸いです。

参考コラム:「ベーシックインカムが実現してしまう件