能力が高くないと挑戦できないのか

 多くの人は「難しいことに挑戦して成功した人」は、「特別な才能を持った、能力が高い人」であると考えていると思います。

 当社も、いろいろな相談を受けているのですが、「夢」があっても、その行動に移れず、諦める人が多いです。
 その理由として、高学歴エリートでも、「学歴」や「勤務先」などのステータス抜きで、やっていける「能力」に自信が持てないことにあるみたいです。
 
 私の場合、周りからは無謀に見える挑戦をする度に、多方面から「君にできるわけない」、「絶対に失敗して後悔する」などと言われて来ましたが、そうした「ありがたい助言」に左右されることはありませんでした。

 それは、自分が特別に「能力が高く」かつ「環境に恵まれている」からでもありません。
また、「人一倍、根性があって努力ができる」わけでもありませんし、長時間労働への耐性も弱い方です。

 それでは、私がどういう思考で挑戦する意思決定をしてきたのか、解説したいと思います。

1.能力や環境に恵まれなくても目標到達は可能と気づいたきっかけ

 私は、「学習塾」に通った経験もなく、学生時代の成績は「中の下」くらいで、大学も学歴フィルターに引っ掛かるくらいなので、自分が、特別に優秀だと思ったことはありません。
 少なくとも、小学生の頃から学習塾に通って、毎日、長時間勉強してきた優等生たちに勝てる気はしませんでした。

 高校生の時に、新聞記事で、パリダカールラリー等の国際ラリーコースを、ホンダのスーパーカブ(世界一売れた商用小型バイク)で走破している日本人の記事がありました。

 なぜ、「スーパーカブ」なのかというと


・車体が安い、燃費が良い(お金がかからない)
・丈夫で故障しない(手間がかからない)
・故障しても、現地で修理できる(世界中に普及している)
・難所は、手で押してクリアできる(軽くて、扱いやすい)

 という感じで、とにかく低コストで、丈夫で、扱いやすいから、「スーパーカブ」を使っているという話でした。

 国際ラリーは、世界的メーカーが開発した、数億円はする車体とプロのドライバーと、それを支えるメカニックやチームによって競われます。
 同じコースを、たった一人で、お金もかけずスーパーカブでも走破できるという事実と、それにチャレンジしている人の存在は、強く心に残りました。

 つまり、自分が、才能や環境に恵まれず、ただの凡人(スーパーカブ)だとしても、やり方次第で、同じゴール地点には到達できるということに気が付きました。

 そして、凡人なりに面白い人生を歩みたいと思い、実践して来ました。
 そこで、能力に自信がなくて、挑戦できない人のヒントになる考え方を示そうと思います。

2.自分に自信がない人が知っておくべきこと

①先天的な能力差は大したことない

 スポーツや勉強などで卓越した人を見ると、自分より何倍も優れているように見えます。
 
 例えば100m走の金メダリストは、凡人より何倍も足が速そうに見えます。

 でも、100mの世界記録は9秒台、もし、平均的な健常男性が、同じトレーニングを積めば、100m 13秒くらいは出ると思います。
 「世界トップ」と「平均的な人」は、ものすごい差がありそうに見えて、実際の差は、30%しかありません。
 同様に、知能指数も、「世界トップ」と「平均的な人」の先天的な差は、大したことはないと思います。

 30%の差があるので、当然、勉強やスポーツの競争をして上位入賞するといったことは不可能かもしれません。
しかし、少し遅れても、同じゴールには到達できます。

 つまり、平均レベルの能力があれば、世の中の99%以上の事柄において、目標達成において、大きな問題になることはありません。
 無駄に、自分を過小評価して委縮してしまうことは、避けましょう。

 ちなみに、知能検査はパターン化されています。
知能検査がベースの学習教材も多く、そうしたテストに幼少から慣れている人は、ハイスコアを出せますが、それで実際に、頭がよくなったわけではないです。
 
知能テストを根拠に自分が天才だと主張する人がいますが、「自己評価のインフレ」を招き、社会不適合を起こす弊害も大きいと思っています。

また、東大、京大等の超難関大学は、天才がゴロゴロいるような話が多いですが、私個人は、これまで、多くの超難関大学出身の人(中には首席卒業という人も)と、一緒に仕事をしたり、関わったことがありますが、確かに、優秀で、性格も良く、我慢強い人が多いですが、「天才」を感じさせる人には、出会ったことないです。
※テストが出来たり、計算が速いことを「天才」とは言わないと思うのですが
一度、「本物の天才」にあってみたいものです。

②人生の結果に差が出る理由

 例えば、同じ大学を卒業した人の間でも、40代くらいになると人生の結果は、何倍も差が生じます。
 それは社会に出てからの「キャリア」の差によるものです。
 一般的に、「キャリア」 = 「所属組織や役職のステータス」と考えている人が多いですが、本当のキャリアとは「顧客や社会に価値を与えて報酬を受け取る能力」のことです。

 本当のキャリアを構築するには、ただの勉強とは違い、当事者意識をもって、常に良い仕事をできるように心がけ、周りをよく観察し、円滑な人間関係を構築し、社会の仕組みを理解して、能力を向上し、様々な失敗や成功を経験し、といったプロセスを歩む必要があります。
 こうした「生きる姿勢」により、実力は複利で増えます。実力が毎年20%成長とすると、10年後には6.2倍になります。

 そうした「生きる姿勢」の違いで、30代も過ぎれば、同期入社した人材でも「実力」は何倍も差が付いてしまいます。

③成長は停滞してしまいがち

 建設コンサルタント業界では、「一人前まで10年」という言葉がよく使われます。30代前半位になると「会社のエース」と呼ばれる人が現れます。
 ところが、多くの人は、その後は、停滞してしまいます。

 人間の成長の過程を考えると、入社後、数年間は、どんどん経験と知識を吸収し、やればやるほど成長し、年月が経つほど成長率は鈍化していきます。
完成形を100%とすると、5年目には80%まで成長し、その後の5年で、残り20%が伸び、30代前半でエースの誕生です。
その分野での成長限界に達しているため、その後、いくら業務経験を積んでも、その分野での成長はあまり期待できません。
 
 また、実力が同期の何倍もあって、「我が社のエース」と上司に褒められても、待遇は、同期と大して変わりません。
 そして10年もやると、さすがに仕事に飽きてマンネリ化します。さらに昇進などを巡って人間関係の面倒くさいことに巻き込まれがちです。
 そこで、モチベーションも失って、その後は、人生消化試合になりがちです。
 ※それなりに出世はすると思いますが
  
 もし、このまま次の挑戦に移行し「成長プロセス」を維持できれば、次の10年で、さらに何倍もの成長が期待できます。
 それが、できれば40代くらいには、別次元の人生が待っているでしょう。

 つまり、「成長プロセス」を40代まで維持できるかが、夢の実現への大きなカギとなってきます。 
※一つの組織で、「成長プロセス」維持できる可能性は、少ないでしょう。

おわりに

 私の場合、上記に挙げたように、自分の能力は並レベルを前提として、「自分はスーパーカブ」だと思って生きてきました。

 また、苦労し過ぎると、体を壊したり、モチベーションを失うリスクがあるので、正直、あまり頑張りません。「他人との競争」でもないので、遅れても気にしません。
 ※数年無職で、フラフラしていた時期もあります。

 それでも、やり方さえ工夫していけば、入社10年目にはエースになれましたし、資格は技術士を三部門(建設部門、経営工学部門、総合技術監理部門)と中小企業診断士も合格出来ましたし、大手コンサルに中途入社したり、国の研究機関で政策研究員になって、欧米各地を回る仕事をしたり、未経験で経営コンサルとして独立して、老舗コンサルファームのパートナーをやったり、さらに自分で会社を所有してビジネスが出来ています。

 戦略的には、「選択と集中」により数年単位で一点突破を繰り返す感じですが、そうした打算的な感覚はなく、実際は、スーパーカブでラリーコースを走破する感覚で、次々に現れる面白しろそうなことに挑戦したら、たまたま、継続的な「成長プロセス」を維持できて、気が付いたら、普通の人とは、かなり違った人生になっていました。

 もし、「自分が優れている」という前提で、皆に認めて貰おうと、他人と競争しながら生きていたら、上手くいかなかったと思います。

 この生き方ですが、有名大学を出て有名企業に長年勤めて出世した人からすると、自分より遥かに格下で、大した努力もしないくせに、世の中のおいしい所だけ、上手く渡り歩いているように見えるみたいで、「ずるい」「身の程を思い知らせたい」といった感情を持つ人もいます。

 そのような人に、「君にできるわけがない」的なダメ出しされた場合は、「お前に無理でも、俺にはできるんだな~」「なぜなら俺はスーパーカブだから」と考えています。

また、対抗心や嫉妬心を露わにしてくるような人には、「俺、スーパーカブだよ?」、「スーパーカブに嫉妬するなよ」と言ってやりたくなります。

 凡人には、凡人なりの強みと、戦略があります。
 
 今後の人生のご参考になれば幸いです。