優秀な新卒を採用する方法(具体的方法編)
からの続きです。
新卒を採用できなくて悩んでいる建設コンサルタント会社は多いと思います。いろんな学校に挨拶に廻っても一人も採用できないとぼやいている会社も多いです。
また、採用できたとしても、やる気もない、技術を習得する気もなく勉強もしない社員で、結局、数年以内に辞めてしまうというケースも多いと思います。
今回のコラムで、建設コンサルタントが優秀な新卒を獲得する方法をお教えしたいと思います。
「優秀な新卒社員」とは?
まず、具体的方法を述べる前に、「優秀な新卒」を定義しておきます。
ここでは、“企業にとって優秀な新卒”ということです。建設コンサルタント会社というのは、技術のプロとして、公的機関発注の建設コンサルタント業務を行い、報酬を受け取っています。
建設コンサルタント会社が欲しい人材は、このビジネスにおいて価値を最大化してくれる人材となります。
具体的には、
- 技術のプロとして業務をこなして、発注者の満足できる成果品を納期内に作成し、なおかつ売上と利益を確保する能力がある人
- 同僚の支援、管理や人材育成など社内で協調して貢献できる能力ある人
- なるべく早く一人前になって、中途退職せずに長期的に会社で活動してくれる。会社を背負って立つ人材となってくれる人
です。ここでは、「優秀な新卒」は、この定義で行きます。
では、このような、プロ意識がある「本物」の素質を持っている人材の共通点として、
- 向上心、探求心が強い
- 依存心が低い
- 独立心が高い
があげられます。
自分の価値を正当に評価して欲しいと思っています。
このような人材を獲得する方法を以下に述べていきます。
対策1: 初任給を、周辺企業より5~10万円高くすること
日本社会では、年功序列の終身雇用が根底にあるせいか、なぜか、初任給相場があって大体、地域や同業他社で横並びになっています。
初任給が同じなら、新卒は、なるべく大手に行こうとします。
安定性もステータスも将来の収入も、キャリア面でも良さそうだからです。
本気で新卒を採用したかったら、同業他社より5~10万円くらい高い初任給を提示すべきだと思います。
もし、「初任給30万」と提示できれば中小企業でも新卒が来る可能性はかなりあります。
初任給を多くすることの利点は、「初任給が多い⇒儲かっており技術者を厚遇している」と感じさせることができます。
現在でも若者の大部分が安定志向です。高い初任給に釣られて大手以外を選択する人は、リスクテイカーであり、自分に自信がある人間ですが、「本物」か「山っ気のある人」に分かれます。
でも仮に5人に一人でも大手コンサルでエース級になれる「本物」が居れば、その会社は投資を何百倍にもペイできるでしょう。
対策2: 5年でとりあえず一人前にすること
プロ意識を持った本物というのは、強烈な向上心を持っていて勉強家です。
何より早く一人前になりたいと考えています。
しかしどこの会社も実際はOJTと称して、技術部に入れてあとはお任せとなってしまいます。
そして、下済みとして雑用をさせたり、業務の全体を把握させず、打ち合わせにも連れても行かず、ひたすら下働きをさせたりします。
このようなOJTでは、10年目でもまともに業務ができない人がいます。
それでも「本物」は、業務を覚え、勉強して勝手に成長していきますが、成長はだいぶ遅れます。
何より、業務全体を把握しないまま、意味の分からない非効率な作業やダメ出し、同僚に足を引っ張られたり、茶化されたり、とにかく失望させること満載で、辞めるリスクは高まります。
新入社員が下働き作業から始まるのは当然ですが、5年で一人前にするためには、下働き作業をさせながらも、最初から業務の全体を把握させ、打ち合わせにも常に同行させて、客先でしゃべらせて、責任を持たせて、自分で考えさせて、勉強させて、とやっていかなければなりません。
当然、業務管理面、業務目的、業務計画から実行予算、予実管理、工程管理に含む業務のすべてを最初から終わりまで認識させましょう。
そうすれば、もう二年目には小さな業務は一人でこなし戦力になっています。給与以上に十分に利益貢献できるようになります。
5年目には業務をバリバリこなし、10年目には技術士を取得し名実ともに社内のエースとなっているでしょう。
「本物」は、自分の成長が実感できている間は、転職しません。
対策3: 成果に応じた報酬を受け取れること
「本物」の人材は、5年目には業務をバリバリこなし、客先の評価も高く、売上も利益も稼ぐことができます。10年目には、技術士も合格し、名実ともにエース級になっていきます。
年功序列の報酬体系では、若手は人事評価が最高でも同期より月の給与やボーナスが数万多くなるだけです。例えば一人で売上6000万円、業務利益3000万円出したとしても、5年目27歳だから400万、10年目32歳だから500万というような年収額は、十分ありえます。
右肩上がりで年功序列、終身雇用の時代であれば、その収入でも将来の出世という見返りが現実味を持って期待できました。同期より給与が数万多く、上司から「君は優秀だ」褒められれば、満足だったでしょう。
しかし、現代の若手も安定志向が強いものの、年功序列、終身雇用の継続は信じていません。
ましてやプロ志向の人間の価値観からは年功序列は相容れません。
例えば、どこかのプロ野球球団が年功序列、終身雇用を導入したとするでしょう。そうなると有能な選手はみんな逃げ、無能な選手だけが残るに違いありません。
プロ志向の人間ほど、成果に対して正当な報酬をいただきたいと考えています。
周りの何倍も稼ぐ若手のエースに対して、「同期より給与は数万多いだけ、上司が褒め称える」というようなやり方で、本人が納得するでしょうか?
その場合、エースは転職してしまうか、「やってもやらなくても大して変わらない」ということで適当に流して人並みの成果で過ごすようになります。
せっかくの人材がこれでは大損です。
人材を生かすには成果に応じた報酬を受け取れる制度が重要になります。
対策4: 働き方の多様化を認めること
長年働いていると、人間ですから、公私ともに、いろいろなことが起こります。
体調を崩したり、他のことに興味が移ったり、あるいは子育てや介護等のご家族の事情も十分可能性があります。
これまでのエース級の働き方を変えなければいけない時が来ます。
このような時に、よくあるのが、これまで通りのエース級として働きを要求する。または、挫折した人間として、社内の人間関係で辛い目にあうということがあります。特にエース級が挫折した時は、ここぞとばかりにバッシングに励む人が出て来ます。
会社側の非寛容な対応や、同僚のバッシング等を受けると、エース級の人材は、「これまでさんざん貢献してきたのに、この対応とは」と失望し、愛社精神や貢献意欲を一気に失ってしまいます。
辞めるか、つぶれるか、小さくしぼんで生きるか、そんな結論しかありません。会社にとって損失でしかないことになります。
企業経営の観点から考えれば、一人前になった人間が、顧客に迷惑が掛けず業務を遂行し、その成果に応じて報酬を支払えばよいのなら、どこで、どうやって働いてもよいと思いませんか?
例えば、子育て、介護等のために残業不可、在宅作業や週休三日等の働き方であっても、制約条件に応じた仕事をきっちりしてくれて、その成果に応じた報酬を支払うのであれば会社に損はありません。
本人も、稼働時間の減少により報酬が落ちても文句はありません。会社に感謝し、貢献意欲が高いまま永く活躍してくれると思います。
ライフステージに応じた多様性をもった働き方の導入はとても重要になります。
これまで述べてきた四つの対策は、気づいていると思いますが、入社から引退までのキャリアのフローに沿っています。
そのためこれらの対策は、セットで導入すべきです。どれか欠けると効果が半減します。
これら四つの対策を導入し、新卒採用活動時に、これら対策を学生にアピールし認知させることができれば、優秀な新卒を確保することができるでしょう。
プロ志向の優秀な人材は、強い成長意欲と、好奇心を持っています。
早期に戦力化し、バリバリ働いていただき、管理能力応じて、働き方の裁量をどんどん増やし、自由に働けるようにすることは、会社と人材の双方が長期的にwin-winの関係となります。プロ志向の人材は、自由度が増すほど、勝手に勉強してどんどん成長します。
こうした、人材が揃えば、企業経営に大きな成功をもたらすでしょう。
建設コンサルタント経営者等のご参考になれば幸いです。
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