これからの建設コンサルタントは60代社員をどう活用するかで決まる
どこの建設コンサルタント会社も、高齢化が進み、従業員の60代以上の比率はかなりあると思います。
そうした60代の人材を、企業経営の重荷とするのか、貴重な戦力として活用できるかどうかで、企業の成長や利益に大きく変わってくることは明白です。
現状の再雇用制度の問題点や、活用方法を以下に考察します。
(この記事は2020年3月(新型コロナパンデミック)以前)に書き溜めたものです)
こちらの記事も参考にどうぞ「いつまで年功序列と終身雇用が続くのか(建設コンサルタント業界編)」
現状の再雇用制度
現状は、大体の会社が60歳くらいで定年し、年金支給開始年齢まで再雇用となる会社が多いのですが、再雇用となる場合、元の年収から大幅ダウンとなるケースが多くなります。
例えば900万貰っていた人が400万とかそう言った感じです。元の年収の半分以下になるケースが多いと思います。
当社へのご相談は、定年を控えた人材の登録者も多く、各社の情報は入ってきますが、例え年収が半減しても、ほとんどの人が、再雇用を選択されるそうです。
ある大企業の同期20数名中、定年で辞めたのは一人とか、そういう感じです。
なぜ年収が大幅減しても会社に残るかと言えば、端的に「今更、新しい会社で苦労したくない」ということです。
会社に残れば、「長年働いて愛着もあり、友人もいて、後輩からも尊重してもらえるから」、という感じの場合が多いでしょう。
再雇用制度の経営上の問題点
現状の再雇用賃金の決まり方として、全員一律で年収400万などと決まる会社や、元年収の○○%という形で決まる会社などいろいろあります。
中には、「頑張るコース」と「のんびりコース」と二つの選択を個人の意思で選択させる会社もあります。(年収で100万位差がある)
これら方式の問題点は、年功序列の終身雇用の延長として、「年金支給開始まで養ってあげる」という温情的要素が大きいことです。
人間というのは、そもそも基礎能力に大きな差がありませんが、本人の意識と努力により、年齢を重ねるごとに能力にどんどん差が開いてきます。
60代の人材というのは、若年の頃から40年以上も差が開き続けているのです。
例えば、同じ会社の同期同士で、若い頃に差がなかった人でも、技術のプロとして、常に研鑽を積み続け、体を鍛え、心身ともに充実しチャレンジを続けて来た人と、年功序列の終身雇用の制度にすがって、上手く立ち回って生きてきた人では、人材のレベルには雲泥の差があります。
例え上手く立ち回って大企業で出世したとしても、外の世界では価値のない人材がたくさんいます。
ところが、人材のレベルに極端な違いがあるにも関わらず、年齢だけの問題で再雇用制度の名のもとに、一律で年収減少し、「年金支給開始まで雇ってあげる」という制度を適用するとどうなるか、考えてみてください。
まず、本当に自信のある人は、外部に逃げてしまいます。
残った人材の多くは、若い頃の滅私奉公の恩賞を貰っていると考えており、養ってもらって当然と思っている人もいます。技術審査、照査、技術営業、いろいろ理由をつけて責任の無い仕事で、フラフラ過ごすようになります。逆に社内でバリバリやってしまうと同僚からバッシングを受けてしまうでしょう。優秀な人材も腐ってしまいます。
さらに、再雇用制度が壁になって、外部から優秀な中高年の人材を採用できません。
再雇用制度というのは、「優秀な人ほど損で、外の世界で通用しない人材にとっては、大喜びの制度」なのです。
仮に再雇用人材の年収500万であったとしても、一人を抱えるための総費用1000万円程度は必要になります。1000万の利益(粗利)を稼ぐためには、最低3000万の売上が必要となるでしょう。
こうした層が社内で多数存在するようになると、彼らを養うためのお金を確保しなければならない現役世代のモチベーションは大きく低下してしまいます。
こういう会社が、本当の意味で人材を大切にしている会社と言えるのかどうか疑問です。
将来はどうなるか
遠くない未来に、年金支給開始年齢も70代まで引き上げられるでしょう。よって、国の施策的に企業側に年金支給開始までの雇用延長が法的に求められることは、確実だと思われます。
また、60代社員への報酬増や定年年齢の引き上げというのは、企業経営的にはマイナスであっても、企業の経営意思決定層自身が50~60代であり、自分自身の利益を増やすことにつながり、誘因が働きます。
よって、最近は、再雇用時年収も定年年齢も引き上げられていく傾向にあります。
今後は、年功序列の終身雇用体系を維持したまま、終わりを伸ばしていくような状況に多くの会社がなっていくでしょう。定年70歳とか75歳とかなっていくわけです。
つまり、先に挙げた経営上の問題点がどんどん拡大していくことになります。
企業経営にとっては、大変な重荷になっていくでしょう。
しかし、もうこうなると、経営意思決定を行う層も60代以上であり、自分自身をリストラするような自己改革は不可能で、終身雇用の維持だけを目的とした会社になっていくでしょう。
一方で、成果給を導入してくる会社もでてきます。
年齢に関係なく、出した成果に応じて報酬が決まる会社です。
そうした会社には、年齢を問わず優秀な人材が集まっていくでしょう。
現状でも、60代でも現役で頑張る人材を積極的に採用している会社があります。60代で800万以上、65歳に700万以上の年収を提示してくる会社もあります。
フラットな組織、より自由度も高く、間接人員も少なく、社員のプロ意識も貢献意欲も高い会社です。
当然、企業の利益も大きくなり、その利益を、人材獲得や育成、М&Aなどに回せば、大きな成長が見込めるでしょう。
10年、20年スパンで考えると、こうした会社が次の勝ち組企業になっていくと思います。
まとめ
いずれにしても今後、企業が社員を70代まで雇用しなければならない時代が来ます。
企業経営者の皆さんに知っておいてほしいことは、年功序列の報酬体系を行っていると、せっかくの人材のモチベーションも向上心も奪い、なおかつ組織に依存しなければ生きていけない存在にしてしまいます。
プライドと自己評価だけ高く、外の世界で通用しない人材をたくさん抱えて、その人達を70代まで養う会社が成功できるわけがありません。
報酬体系というものは、人材の価値や成果に応じた報酬を支払うべきなのです。
そうすれば、価値を提供する能力を磨くことこそ、最大のリスク管理と自覚し、そこに全精力を注ぐようになるでしょう。
そして、企業と社員がwin-winの関係で70代までご活躍をいただけるのです。
建設コンサルタントに働いている技術者の皆さん、70代まで続くキャリアを、
「技術のプロとして、価値を提供して報酬をいただき、広い世界で、自由度の高い人生を送るのか」、
「外の世界を知らず、自分の価値を分からずにキャリアを終えるのか」、
どちらを選択されるのでしょうか?
何歳からでもチャレンジは可能ですが、なるべく早くから行動する方が、充実した人生を過ごせると思います。
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