建設コンサルタント業界の人材育成の実態

 当社では、若手の人材の申し込みが来た場合に、「業務は一人で回せますか?」という質問を大抵しています。
 建設コンサルタントにおいて「業務を一人で回せる」ということは、業務主担当者として、業務計画から、工程・コスト管理、実務実施、客先折衝も含めて業務を一通り一人で回せるようになることです。
 完ぺきではなくても、管理・照査技術者の指導チェックを受けながら、実務は全部回せるレベルにあるかどうか、その点を確認しています。
 なぜなら、「一人で業務を回せるかどうか」、「即戦力なのか」どうかで、人材の価値は雲泥の差がつくからです。

 「業務は一人で回せますか?」という質問に対して、20代の場合は、多くの人が曖昧な返事をします。
 30代前半くらいでも、曖昧な返事をする人が結構います。
 その会社の業務規模や技術的な難易度等に違いがあり、一概には言えませんが、建設コンサルタント業界においては、このくらいが標準です。

 建設コンサルタントの企業側の人は「一人前になるのに最低10年はかかる」、「新人の最初の3年は人件費が完全に持ち出しになる」などと話します。
 多くの企業では、一人前になるには10年かかるのが当然と考えているのです。

 某大企業では、入社3年間は、1年毎に各専門部署を転々と経験して、4年後に最終的な専門を確定していくような仕組みがあります。
 程度こそあれ、最初の三年は下働きで過ごし、その後もOJTで人材育成をするというようなケースが多いと思います。
また育ててもらう意識が強い人がほとんどで、自主的な勉強は軽視される傾向が強いです。

 そのため、大学院卒25歳で新卒入社した人が、28歳時点で、一人前どころか、使いッ走り程度の仕事しかできないという感じになってしまいます。
 それでは、30代になっても、まだ満足に業務を回せない人材が普通になってきます。
 (この記事は2020年3月(新型コロナパンデミック)以前)に書き溜めたものです)

企業経営的な観点

 「一人前になるまでに最低10年」という人材育成方法は、日本の伝統的なOJTによる人材育成方法になります。
 こうした年功序列的な、組織の人材のライフバリューも見てみると、まず、入社後10年は下働きで、あまり稼ぎません。30代半ば近くでようやく一人前になります。
しかし、それまでに半分くらいは中途退職してしまいます。
 そして、実務に頑張って、40代も半ばも過ぎれば、出世競争の勝者として自己評価の高いラインのマネジメントクラスと、出世競争に負けて燃え尽きた名ばかり管理職ばかりになってしまいます。
 そして、両者とも年金が貰えるまで会社にしがみついていくことになります。

 つまり、こうした制度では、20代前半から引退までの50年間近いサラリーマン生活の中で、利益貢献できる期間は、よくて20年くらいになってしまうでしょう。
 しかし、給与自体は、社員全員に支払っていかなければなりません。しかも年功序列です。かつて利益貢献したであろう先輩を優先しなければなりません。現在、利益貢献している人が一番たくさん貰えるわけではありません。

 「会社を養う人」に対して、「会社に養って貰う人」が多すぎるのです。これでは、エース級の人材が、いくら稼いでも全く足りません。
 多くの現役レベルが不毛感を感じるでしょう。そして、自分も早く養って貰う側に入ることを夢見るようになります。
また、40歳近くになってさえ、いつまでも半人前扱いされ、うんざりしてしまうでしょう。

 建設コンサルタントは、人件費比率が高い産業です。
こうした産業の企業経営において、重要なのが、「組織の中の利益貢献できる人材の比率を如何に高めるか」、「各技術者の利益貢献期間を如何に永くするか」という視点が重要になります。

 そのためには、まず「若手人材を如何に早く戦力化するか」という点が重要です。一人前に10年もかけてはいけません。3年目には業務を一人で回せて5年目にはもうバリバリに稼ぐように育てるような仕組みを作る必要があります。
 次に、「技術者に現役レベルで、如何に永く活動していただくか」という点が重要になります。技術者を出世競争に敗れてモチベーションが燃え尽き、会社に依存した存在にしてはいけません。技術者が、難しい業務から逃げたり、実務作業から離れて、技術営業や管理や照査やらで、打ち合わせについて回るような生活を夢見るようにしてはだめです。
 当然、高齢化によって気力体力と言った部分は若年時代より低下することは避けられません。しかし、経験値や知力は一生成長し続けるのです。
エンジニアが役職ではなく、成果や自分の価値を高めることが、評価や収入につながるような報酬体系、体力的低下を考慮した上で、現役で、永く能力を発揮できる仕組みを構築すべきでしょう。

 最後に「管理、間接部門を如何に最小化するか」ということです。どうしても長年働いた社員に報いるために、必要のない役職や、職務が増えて、間接・管理部門が増大していきます。
 組織設計において、「統制範囲の原則」、「権限と責任の統一」という原則があります。
 組織統制が効く範囲で、管理者は少ないほどよく、また権限と責任が統一していなければなりません。
 現状の大企業の業務管理を見ても所属部長、管理技術者、照査技術者、社内の品質・照査部門と言った感じで、管理者だらけで権限や責任が重複しており、社内で承認ばかり多くて仕事はやりにくく、口は出すのに、何かあっても誰も責任を取らない感じになっているケースも少なくありません。
 「組織の上ほど楽で、責任を取らない」という伝統的日本型組織になってしまいます。

 組織変革には大きな痛みが伴いますが、やれることはやっていくべきでしょう。

個人の観点

 建設コンサルタント会社に技術者として、勤務するのであれば、建設技術のプロとして、顧客に価値を提供し報酬をいただく存在にならなければなりません。会社に対して貢献意欲を持ち、会社とは常にwin-winの関係で独立性のある存在であり、それが崩れた時には、新たな天地を求めて移動できる人材こそがプロと言えるでしょう。
 そのために、常に自分の価値を磨き続ける必要があります。
新人は、まずは、「早く一人前になること」です。
一人前になることに、会社の教育や上司を頼ってはいけません。自分の意思で勉強と実務を並行し、実力をどんどん高めていってください。
また、何歳になっても、自分の能力や価値を高めるための勉強や体力維持の取り組み等の挑戦を続けていくべきでしょう。
そうすれば、何があっても自由な人生が送れるはずです。
また、長期的には、それが一番、精神的にも肉体的にも負担が少なく、仕事が「楽」になる方法でもあります。

ご参考になれば幸いです。

(次の記事 「建設コンサルタントの新入社員が5年で一人前になる方法」もご覧ください)


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