新しい働き方への建設コンサルタントの対応方法と注意点

新しい働き方への対応の緊急性

 新型コロナパンデミックにより、病気による被害と同時に経済活動が停止し世界全体で想像を絶する損失を被っています。
この影響は、短期間で終わらず、今後も、第二波、第三波、あるいは他の未知の感染症、バイオテロ等のパンデミックに備えた社会構造が求められることになるでしょう。
特に、緊急的に求められているのが、社会的距離の確保と経済活動を両立することです。
もう、以前の働き方に戻ることはありません。

 例えば3年後に、同様のパンデミックが起きた時、経済活動を停止した企業や従業員に対して、公的な救済が大規模に行われることはないでしょう。
なぜなら、既に予期可能なリスクになってしまっているからです。予期可能なリスクに対応していないのは、単に企業経営者の過失です。
そのため、楽観的に考えて対応していない企業は、将来、再度の緊急事態宣言に陥った場合、多大な損害を受けることになり、場合によっては市場から退場することになるでしょう。
新しい働き方は「導入を検討します」という問題ではなく、どうやってやるのか、緊急性を持っていることを理解しましょう。
では、具体的にどのように対応していけばよいのか、判断が付きかねている企業も多いと思います。
ここでは、新型コロナパンデミック以降の新しい働き方に対応する際の、重要な留意点や方法について網羅的に整理したいと思います。

新しい働き方への課題

 社会的距離の確保と経済活動を両立する「新しい働き方」を導入するための課題は下記のものとなるでしょう。

・日常業務(通勤等含む)で対人接触を如何に減らすか
・一か所に集まらない仕組み作り、一人感染者が出ると全社の機能が停止するリスク
・従業員の健康管理強化
・経営の効率性、生産性(コスト削減、品質向上等)の向上に資するものであること
・従業員がより働きやすさを感じるもの、ストレスや負担にならないもの
以上になります。今後の対応方法を考える時に、すべてが上記の課題を解決することに繋がっている必要があります。

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対応方法

 前記の課題に対して導入すべき対応策は下記のものとなります。
・テレワーク、在宅勤務
・郊外に小規模オフィス(ワークスペース)分散、本社機能の縮小
・ラッシュを避けた時間差出勤、対面が必要なときだけ出社
・健康経営(従業員の心身の健康状態を重視した経営)
体調の悪い人を出社させない、検温体調チェック、手洗い、マスク、外気換気、人との距離、デスクパーテーションの設置、長時間労働の禁止

また、上記の対応策を実行するために、同時に下記のIT技術や、組織の仕組みの対応が必要になります。

IT技術による対応

・ペーパーレス化、電子承認(ハンコ処理の激減)、電子決済
・web会議、webによるコミュニケーション
・ソフト・データのクラウド化(各パソコンにデータを落とさない)
・業務情報(工程、品質、コストなど)の見える化、共有
・情報セキュリティの強化

組織の仕組みの対応

・在宅勤務の勤怠、労務・生産性管理の仕組み
・本社機能の縮小と、オフィスの分散(郊外等)
・組織のフラット化(間接人員および承認過程の削減、責任の明確化)
・業務成果計測の仕組み
・成果に応じた報酬体系
・働き方のルール作りと、組織構成員への浸透
・モラルおよびモチベーションの維持策

導入手順について

 新しい働き方への対応策は、同時にIT技術の導入や組織の仕組みの変革をしなければ、達成ができません。また、従業員の意識改革や慣れも必要です。そのため、完成度の高いものを短期で導入することは難しいでしょう。
導入を成功させるためには、まず、すぐに始められて効果のあることを実行し、その間に、時間が必要なものを整備し順次導入していく、さらに実行しながら試行錯誤しつつ、制度の完成度を高めていく必要があります。
完成度の高いレベルに持っていくには、三年程度はかかることを覚悟する必要があります。

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注意点

 新しい働き方への対応を導入に当たって注意しなければならないことは、多くの社員、特に古参の社員は、内心は「新しい働き方」に反発を感じているということです。
日本企業の年功序列的働き方は、職務範囲や責任が不明確であり、成果も明確に測定されないまま、何となく回っています。
組織は階層構造を持ち、先輩が気に入った後輩に権力を譲り渡していく、「メンバーシップ型雇用」と呼ばれる形です。
新しい働き方の導入は、テレワーク等を成立させる前提として、経営・業務の見える化、組織のフラット化、成果給などを進めざるを得ません。
これまでの働き方に慣れ親しみ、恩恵を受けている人には、内心は、受け入れがたいことばかりです。
経営トップが、新しい働き方への対応に号令を出しても、いろいろな障害が待ち受けているでしょう。

 予想されるのは下記のようなケースです。

・経営トップが号令を出すと、制度やIT機器を形だけ導入し「やってる感」をアピールするが、実態は何も変わらない
・徒党を組んで不作為を行う
・事態が収束して、しばらくすると、「もうこんなことは起こらない」「大げさ」など過剰対応論が出て来る
・新しい働き方でトラブル等が起こると、デメリットを針小棒大に騒ぎ立てる。

 結果として、社内で積極的に「新しい働き方」を推進しようとしていた幹部は、組織内での立場が危うくなります。
また、新しい働き方に適応していた従業員は、組織内で三流社員扱いを受けるようになるでしょう。
そうやって、いつのまにか骨抜きにされ無意味なものになってしまう恐れがあります。

 まあ、ブラック企業でも大企業クラスになると「完全週休二日、働き方の多様化、ワーク&ライフバランスを重視しています」と一見ホワイト企業を装っているものです。
そんな茶番は、社員は忍従してくれても、ウイルスは忖度してくれません。いつかやってくる、再度のパンデミック時には、大打撃を受けることになるでしょう。
また、従業員もどこまでも従順ではありません。有能な人材ほど、「自分の身は自分で守るしかない」と気づいて、社外に流出してしまうでしょう。

 手段が目的となって、「やってる感」だけアピールするような無意味なことにならないように注意すべきです。
課題⇔対応策⇔IT技術導入、組織構造変化というように、実現へのロジックが有効に成立していなければなりません。
常に各対策が、課題の解決につながっているのか、効果を検証していく必要があります。
また、新しいことをやるときに、多少のトラブルやデメリットは当たり前のことです。もう後戻りしない覚悟で、デメリットに対して改良を加えていかなければなりません。
PDCAのマネジメントサイクルを確立させて、ブレずに進みましょう。
企業も個人も「災い転じて福となす」の精神で、タダでは転ばない態度で、これを機会に新たな働き方を積極的に導入していってください。

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おわりに

 今後、各社で「新しい働き方」への対応が行われるでしょう。表面的には多くの企業が導入しているように見えるかもしれませんが、実際に成功できる企業は少ないと思っています。
技術者の皆さま、もし、現組織で、「新しい働き方への対応」が実態として骨抜きになるようであれば、そのような組織は、見切りをつけた方がよいです。
自分の身を自分で守るしかありません。

 また、当社においても、今後、テレワーク、リモートワーク等の新しい働き方に合った求人も積極的に開拓し、ご紹介していきたいと思っております。

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