士業カーストについて

 ネットの世界では、○○士 vs △△士といった感じで、論争になることがあります。
 どちらが「格上か?」、「すごいか?」といった馬鹿らしい論争です。

 中でも、技術士や中小企業診断士は、独占業務のない「名称独占資格」であることを理由に「格下」とか、「食えない」、「意味ない」と見なされることが多いようです。
ちなみに、私は技術士(三部門)と中小企業診断士なので、名称独占資格王ですね(笑)

 現実の場面で、士業同士が、張り合うことはあまりないですが、状況によっては、マウント合戦や、士業カーストみたいなものを感じたことは、何度かあります。

 現実に感じた士業カースト的なものを、語ってみたいと思います。

1.中小企業診断士の集まり


 中小企業診断士は、難関国家資格ですが、誰でも受験できるため、ビジネスマンの人気資格となっています。また独立している人は全体の3割程度です。

 よって、中小企業診断士の集まりは、異業種交流会的に感じになりますが、会社のお偉いさんも多く、マウント取り合いみたいな場面もありがちです。

 特に、名刺交換は、勤務先、役職、保有資格のステータスをマウンティングし合う瞬間でもあって、個人的には、結構面白いと思っています。悪趣味ですが(笑)
 
 有名企業社員の人は、名刺を出した瞬間に「どや?」と相手の反応を期待しているのが分かります。
 これが外資大手や一流商社だと「すごいですね」と多少の反応はしてくれますが、中小企業診断士の世界では、都市銀や大手メーカー位は当たり前で、何も反応がなくて、がっかりした様子が見られたりします。
 中には、既に定年退職している「会社の名刺」を出してくるオジサンもいて、「さすがにそれはまずいでしょ」と言ってやりたくなります。
選民思想の「勘違いオジサン」の多い業種は、銀行とマスコミ(新聞社など)で、「僕は、本来、君なんかが口を利ける存在じゃない」と言われたことがあります。
 しょぼくれたオジサンから、こういうセリフを聞けるのがマウンティングの醍醐味です。

 次に、資格マウント合戦に移りますが、中小企業診断士にプラスして持っている資格が、行政書士や社会保険労務士は、割と多くて、この辺は、マウントとしては弱いです。
 やはり、弁護士、会計士、税理士あたりは一目置かれます。医師も何人か見たことあります。

 皆さんが気になる「技術士」ですが、一般の認知度が低く、あまり反応はありません。
 最近は認知度が、やや上がっているみたいで、「現実世界で、技術士に初めて会いました」と言われたことがあります。珍獣か(笑)

 ただ、理系出身者(建設以外)は、さすが知っていて「会社の顧問が持っている神秘的な資格」というイメージのようです。
 建設産業系の人の認知度、ステータス共にとても高く、技術士(三部門)が入った名刺を出すと、相手がしばらく固まってしまったり、「あなたは何者ですか?」と言われたことがあります。
 だからと言って、何も得すること無かったですが、少し良い気分にはなります。

2.他の士業と関わった時

 公的支援機関の登録専門家の会合や、創業支援施設に入居していた時だったり、仕事上の付き合い等で、他の士業と遭遇することがあります。
 その中で、弁護士、公認会計士は、「俺は、お前らより格上」的な雰囲気を、漂わせる人が多いですね。

 特に、公認会計士は、その傾向が強いです。(私が出会った範囲では)

 その理由として、公認会計士は、大体が大学時代に勉強を開始し、20代前半で筆記試験合格後は、ほとんどが、ビック4の大手監査法人に入社する点と、監査法人の監査業務対象が上場企業であり、監査役(監査する側)として、顧客(上場企業)相手にも態度が大きい?ためと考えられます。

 同じ「会計専門家」でも「税理士」は、科目合格制で、働きながら試験合格した苦労人も多く、勤務先も街の税理士事務所で、顧客は中小企業の場合が多いので、腰低く、人間が出来ている感じがします。

 公認会計士は、学生時代から勉強漬け→大手監査法人と、外の世界を知らず、選民思想の純粋培養な人になるのも仕方がない気もします。
 ※公認会計士も、独立すると税務中心で、税理士的になっていったり、フリーランスをしたりで、社会を経験して変わっていく人が多いみたいです。
 
 さて、技術士の他士業からの扱いですが、他の士業から、技術士や中小企業診断士は「独占業務もないのに、どうやって稼ぐの?」という質問されることがあります。
 「どうせ食えてないだろう」的なニュアンスを含んでいる感じがします。

 「コンサル」と答えると、「コンサルなんかで本当に稼げるの?」と信じてくれませんし、具体的な仕事を説明すると、そういう世界が実在するとは思わないみたいで、不機嫌になったりします。

 「名称独占資格の分際で生意気」といった感じです。

 だから、「いろいろやって、なんとか暮らしています」と答えるのが無難です。

3.名称独占資格は意味ないのか

 技術士や中小企業診断士は、難関な国家資格でありながら、「独占業務」がありませんが、意味がないのでしょうか?

 そもそも医師、弁護士、会計士など「独占業務資格」というのは、国民の権利、財産、生命、身体等の「保護を目的」としています。
 そのため、定型業務として、業務のやり方、基準、報酬などが厳格に定められています。
 
 国民に不可欠ではありますが、仕事内容にゼロから価値を生み出すような創造性は、あまり感じられません。

 一方、技術士や中小企業診断士は、コンサル系の資格と言われています。
 
 資格の目的は、技術士は、「科学技術の向上と国民経済の発展に資することを目的」(技術士法総則)であり、中小企業診断士は、「中小企業者がその経営資源に関し適切な経営の診断及び経営に関する助言を受ける機会を確保するため」(中小企業支援法)とされています。
 目的からみて価値創造的な要素が強い資格であることが、分かると思います。
 また、国民の保護を目的としていないことが、業務独占がない理由なのです。

 だから、「定型的な仕事は飽きてしまう」、「世の中の面白い部分に関与したい」、「新たな価値を生み出す仕事をしたい」という人には、向いていると思います。

 難関国家資格なのに、業務独占がないから「費用対効果が低い」と言われれば、確かに試験合格したら確実に稼げる再現性は低いと言わざる得ません。

 でも、まっとうなビジネスは、「顧客に価値を提供して報酬受け取る」ものであることを考えると、価値創造的な士業が稼げないというのは、おかしな話だと思いませんか?

 技術士も中小企業診断士も、普通に「顧客に価値提供ができる能力がある人」なら、他士業と遜色ないレベルで稼げる点を補足しておきます。

ご参考になれば幸いです。